冥王星の分類について、国際天文学連合が態度表明

【1999年2月4日 国立天文台天文ニュース(238)】

天文ニュース(234)で、冥王星が惑星の分類から外されるかもしれないことをお知らせしました。この問題は新聞でも報道され、一般の関心もひいています。ただ、これはどちらかというと、専門家が学問上、技術的に冥王星を扱う場合の考え方で、冥王星の分類を公式に決定するというレベルの話ではありません。

一般的な報道から、冥王星の問題は国際天文学連合(International Astronomical Union;IAU)がその音頭をとっているように思われがちですが、「そのような事実はまったくない。誤解されているのは残念である。」と、国際天文学連合は、2月3日、委員長ヨハネス・アンダースン(Johannes Andersen)の名で公式の態度を明らかにしました。発表された内容は概略つぎのようなものです。

  1. IAUにおいて、太陽系第9惑星としての冥王星の立場を変更するような提案は、太陽系科学に関するどの分科会、委員会、作業部会でも出されたことはない。したがって、IAUの方針を決める実行委員会でもまったく発議されていない。
  2. 最近、海王星より遠い太陽系外縁部に、冥王星に似た軌道、性質をもつかなりの数の小天体が発見されている。これらの天体に関し観測や計算をする便宜上、冥王星をこれら海王星以遠天体(Trans-Neptunian Objects;TNOs)の技術的リストに加えることは提案されている。しかし、これは冥王星の分類を変えるといった話ではまったくない。IAUの惑星系科学分科会の下にある作業部会のひとつは、TNOsの番号付けについて、学問的な議論をしている。物理的性質によって惑星を分類することも考慮している。しかし、これらの議論にはまだ時間がかかる。しかし、この分科会の小天体命名委員会は、冥王星に小惑星の番号付けをすることには反対を決定している。
  3. IAUは、他の科学分野や一般に影響を与える天文学上の問題について、ときに決定をしたり勧告をしたりしている。これらの決定や勧告は、法律や国際法で強制される性質のものではないが、合理的で、実用上効果的なものであるから、一般に受け入れられている。これらの勧告は、確立した科学的事実に基づき、関係する社会の一般的同意に裏打ちされたものでなければならないというのがIAUの方針である。冥王星の分類についての決定はこの方針に沿わないので、効果もないし、意味もない。冥王星の立場が変えられそうだというのは、この方針を十分理解していないことによる発言である。

したがって、学問的、技術的立場を別にすれば、冥王星が惑星から外されるというのは、まだ先走った考え方といえましょう。第9惑星の座は当分安泰と考えていいようです。

参照  IAU Press Release 01/99(Feb.3,1999).