ミドルサイズのブラックホール発見

【1999年4月13日 NASA

米航空宇宙局(NASA)米国カーネギーメロン大学 の研究グループは4月13日、 質量が太陽の100倍から1万倍で、大きさが 月程度という「中量級」の質量をもつブラックホール を見つけたと発表した。

ブラックホールとは、自らの強大な重力によって物質や光でさえも 外部空間に出ることができなくなった天体のこと。 これまで、ブラックホールには2つのタイプがあることが 知られていた。太陽質量の数倍程度の質量をもつstellar型と、 数百万から数億倍にもなるsupermassive型である。 前者は恒星の終焉に残骸として作られるもので、その大きさも 直径数キロメートル以下なのに対して、supermassive型は宇宙初期に つくられた巨大ガス雲の中や、莫大な数の星が崩壊する過程で 形成されたものと考えられている。

NASAゴダードフライトセンターのEdward Colbert博士とRichard Mushotzky 博士は、German/US/UKの共同X線観測衛星 「ローサット」と日本のX線観測衛星 「あすか」 のデータを用いて、比較的太陽近傍にある39の銀河から放出 されるX線を解析した。これらのX線はガスや粒子がブラックホールに 落ち込んでゆく際に放出されるものであると考えられる。 ところが、このX線スペクトルが、おもに活動銀河核(AGU)で観測される supermassive型のブラックホールから放出されるスペクトルとは 異なったものであることが判明した。 このことから、博士らは今回観測されたX線源となっているブラックホールは AGU起源のものとは成因の異なるものであると推測した。

また、米国カーネギーメロン大学のAndrew Ptak博士とRichard Griffiths博士は M82からのX線を日本のX線天文観測衛星 「あすか」のデータを用いて解析し、同様なX線スペクトルを得た。 M82はその中心部からジェット構造 が見られる不規則型銀河で、中心付近では星形成が頻繁に行なわれていると 考えられている。これらの恒星は順次終焉を迎え、超新星化する数も 多くなる。Ptak博士によると、過去1千万年においてM82で形成された stellar型ブラックホールと中性子星の数はあわせて100万個にものぼるとみられている。

これらのことから、今回観測されたX線スペクトルの特徴をもつ ブラックホールは、恒星の終焉に作られたstellar型のブラックホールが 銀河中心領域に集まり、それぞれが継続的に何回も合体をくりかえした結果 形成された、中量級のものであると推測されている。両グループによる研究論文は それぞれAstrophysical Journal誌、Astrophysical Journal Letters誌に 掲載される予定である。

ニュースソース(英文)
ftp://ftp.hq.nasa.gov/pub/pao/pressrel/1999/99-051.txt
http://whatsnew.andrew.cmu.edu/LifePhysical.qry?record=33101