火星で北極近くに巨大サイクロン発生
【1999年5月19日 Space Science Update (NASA, STScI) 】
ハッブルスペース望遠鏡は4月27日、火星の北半球高緯度帯に発生した巨大なサイクロンを捉えることに成功した。この画像は同望遠鏡に搭載されている広角惑星カメラ2によって撮影された。
・画像左
波長410nmの青色光で撮影された、火星巨大サイクロンの発見画像。中心は火星北緯65度、西経85度付近に位置し、その直径は1600km以上という巨大サイクロンである。北極付近には氷の極冠がまだ残されているのが確認できる。赤道付近にはこれまでに地上の望遠鏡でも観測されていた帯状に広がる雲が捉えられている。この雲は北半球の中緯度帯にも達しており、また南極付近にも広がっているのがわかる。また、火星の西縁(朝側)に位置する巨大火山Ascraeus Monsの頂上部がこの雲海を突き抜けて黒い点として見えているのがわかる(矢印)。この死火山の高さはおよそ25kmであり、その広がりは400kmに及ぶと推定されている。
・画像右上
火星北極上空から眺めた火星サイクロンのカラーコンポジット画像。火星表面の画像と重ねて表示されている。410nm、502nm、673nmの3波長からカラー合成されたこのコンポジット画像によると、サイクロンはダスト粒子による雲ではなく、おそらくその大部分は氷の粒子によってつくられているものとみられている。台風の目もきれいにみえており、この目を通して火星表面の様子も確認できる。この画像は左の画像のうち北緯45度以上の領域を切り出し、視点を北極上空に移して見たものである。
・画像右下
台風の全体像を真上から眺めた状態に変換した画像。この画像によって、もと画像ではよくわからなかった雲のスパイラル構造などがより詳細に確認できる。
このような巨大サイクロンがこれほど緯度の高い場所に発生することは地球ではありえない。火星極冠が氷粒等の供給源となっている火星ならではの現象ではないであろうか。
5月2日に地球最接近となった火星は、今後もしばらく観測の好機がつづく。このめずらしい現象を地上から確認することはまだ可能かもしれない。火星サイクロン、ぜひねらってみてはいかがだろう。
参照:ニュースソース
STScI-PRC99-22, May 19, 1999
参照:ハッブルスペース望遠鏡最新画像のページ
http://oposite.stsci.edu/pubinfo/pr/1999