月面着陸30周年の日、X線天文台が宇宙へ
【1999年7月9日 NASA】
NASAは最新鋭のチャンドラX線天文台を宇宙に運ぶことを主目的としたスペースシャトルSTS-93ミッションの打ち上げ日を、月面着陸30周年となる今年7月20日に決定した。この天文台の名まえは、恒星物理学の分野でよく知られ、「チャンドラセカールの限界」則を発見した、Subrahmanyan Chandrasekhar博士の功績を称えてつけられたものである。
このX線天文台は、地上からは観測することのできないX線を捉えて、宇宙の構造と進化を探査すると同時に、宇宙という巨大な実験室を用いて地球上では知ることのできない詳細な物理学を研究することを目的としている。その題材は、太陽系内の天体である彗星から宇宙の果てに位置するクエーサーまで、じつに幅広い。おもな研究課題としては、宇宙に存在するといわれる謎の物質“ダークマター”の探査や、遠方の巨大銀河の中心部にみられる爆発的な活動の原動力についてなどが挙げられている。
天文台には望遠鏡本体の他にメインコンピュータ、通信用アンテナ、太陽電池パネル、データレコーダのほか、移動用噴射装置、姿勢制御用カメラ、太陽センサー、バックアップ電源などが搭載される。円筒形をした望遠鏡の受光部には、X線イメージャーとスペクトロメーター装置が置かれ、データの取得がおこなわれる。
宇宙空間に放出後、約2か月かけて近地点9920km、遠地点13万9200kmの超楕円軌道に投入され、その後は約64時間かけて地球を周回するようになる。このような超楕円軌道をとることで、X線望遠鏡の観測機器に重大な障害を及ぼす危険性が高い地球周辺の放射線帯を通過する時間をなるべく減らしているのである。この天文台の寿命は設計段階で約5年と見積られている。
なお、今回のスペースシャトルに搭乗してミッションを指揮するのは、アメリカ空軍のアイリーン・コリンズ(Eileen Collins)大佐。女性として初めて、スペースシャトルミッションの指揮をとることになる。今後の活躍にも期待したい。
ニュースソース:
・Chandra X-ray Observatory News
・Exploring The Invisible Universe:
The Chandra X-ray Observatory
・Today@nasa.gov
・NASA KSC Release No. 57-99