NASAの月探査機が月面に衝突

【1999年8月2日 NASA

■

NASAの月探査機ルナ・プロスペクターが日本時間7月31日午後6時52分、月の南極付近のクレーターに衝突することに成功した。このようすはハッブル宇宙望遠鏡や地上数か所の天文台が観測し、月の南極付近に大量の水が存在するかどうかの解析を行っているところである。アメリカでは多くのアマチュア天文家が望遠鏡を月に向けたが、衝突のようすが捉えられたという報告はいまのところ入っていない。この時間、残念ながら日本から月を見ることはできなかった。

ルナ・プロスペクターは1998年1月6日NASAにより打ち上げられ、月面を遠隔探査して月に水がある可能性について約1年半にわたって調査してきた。その結果、月の両極に大量の水が存在することを示す、充分な量の水素が発見された。このことにより、月の極地域の永久に陰になっているクレーター内部には最高60億トンもの水の氷が存在すると見つもる科学者もいる。この真偽を確かめるため、ミッションを終えたこの探査機を直接月面に衝突させ、その際に宇宙に放出される水蒸気の量をハッブル宇宙望遠鏡などによって調べようという壮大な計画が立てられた。

■
■
月の南極付近に位置するMawsonクレーターと、ルナ・プロスペクターの衝突経路。月面からの仰角は約6度しかなく、月面をなめるようにしてクレーターの外壁に衝突させる。この外壁は太陽光がつねにあたらない位置にあり、大量の水が隠されている可能性があるという。

NASAではこの探査機を月の南極にあるMawsonクレーターの縁に直接衝突させることを計画。クレーターの直径は50〜60キロメートルで、その縁には内部を陰にするのに充分な高さがあり、かつ探査機を適切に衝突させる飛行経路に邪魔にならない低さでもあるという。ルナプロスペクター探査機の重量はわずか160kg程度であるが、月面に衝突したときのエネルギーは重量2トンの車が時速180kmで衝突するのに匹敵するという。

NASAによる試算では、衝突の数分後にクレーターからプルームが立ち上がる可能性があるもののその明るさは月縁の明るさの1万分の1以下であり、通常の小型望遠鏡ではまず見えないと予想されていた。しかし万が一の可能性もあるため、アマチュアによる観測を呼びかけていたが、これまでのところその痕跡を捉えたとする報告は入っていないという。

しかし眼視で衝突のようすが捉えられなかったといって、この計画が失敗に終わったというわけではない。むしろルナ・プロスペクターが予想よりも深くクレーター中に潜り込んでしまったため、表面の土壌はあまり飛び散らなかったのかもしれない。宇宙に蒸発した水の痕跡を捉えるための観測は世界中で行なわれ、データは現在解析中である。その結果が楽しみである。

<ニュースソース>
Farewell, Lunar Prospector(NASA SPACE SCIENCE NEWS)
ルナ・プロスペクター月面衝突のページ
Lunar Prospector Impact Page