神戸隕石は炭素質コンドライト

【1999年10月28日 国立天文台天文ニュース(301)】

9月26日に神戸に落ちた隕石(天文ニュース293)は、神戸大学の分析から、珍しい炭素質コンドライトであることがわかりました。 日本で炭素質コンドライトの落下が確認されたのは今回が初めてです。

新聞には、「炭素質いん石」とも紹介されていましたが、炭素質コンドライトとはどんな隕石でしょうか。 これは石質隕石の一種で、内部にコンドリュール(球粒)と呼ばれる小さな球状の粒子を含んでいるため、コンドライトと呼ばれる一群の隕石に属しています。他の石質隕石に比べて柔らかく、こわれやすい構造をしています。 炭素質という言葉から、他の隕石に比べて炭素の含有量が多いと思われがちですが、これは歴史的誤解に基づく命名で、他種の隕石に比べて、必ずしも炭素量が多いわけではありません。 むしろ、炭素質コンドライトの特徴は、たとえば、結晶水を含んだケイ酸塩など、気化しやすい成分を多量に含んでいるところにあります。 これは、隕石が固結してから高温の環境にさらされなかったことを意味します。 また、アミノ酸、脂肪酸などの有機物もしばしば見出され、生物の起源と関係付けて話題になることもあります。

もうひとつ、炭素質コンドライトには、一部の気体元素を別にすると、その成分が太陽と非常によく似ている特徴があります。 これは、炭素質コンドライトが太陽と同じ原始太陽系ガスから生まれ、その後あまり大きな変化を受けずに現在に至ったためと解釈されています。 したがって、そこにはさまざまな太陽系創生当時の情報が含まれているはずで、太陽系の歴史を探る貴重な資料と考えられています。

最初に書きましたように、炭素質コンドライトは数が多くありません。 南極隕石を除いて、これまで全世界に落下あるいは発見された隕石は3000例近くありますが、その中で炭素質コンドライトは50例もありません。 数が少ない理由のひとつには、構造が弱いため、大気中を落下するときに破壊されやすいことがあります。 だからこそ、地上に到達した炭素質コンドライトは貴重なのです。 以前は、1864年にフランスに落ちたオルゲイユ隕石が代表的な炭素質コンドライトとして扱われ、さまざまな分析がおこなわれました。 現在は、ともに1969年に落下したメキシコのアエンデ隕石とオーストラリアのマーチソン隕石が有名な炭素質コンドライトになっています。 今回の神戸隕石もこれらに貴重なデータを付け加えたと言えましょう。

アエンデ隕石
アエンデ隕石