ブラックホール近傍の宇宙ジェット

【1999年10月27日 Space Science Update (NASA, STScI)

ジェットを吹き出す楕円銀河として知られるM87の中心部をVLBA電波望遠鏡(超長基線アレイ型電波望遠鏡)が捉え、ハッブル宇宙望遠鏡の可視光画像と合わせて公開された。この高分解能電波観測により、ジェットが銀河中心部の数十分の一光年という狭い領域内で形成されていることが明らかになった。その内部にはブラックホールが隠されていると考えられており、まさにその近傍からジェットが細長いビームを形成する様子が捉えられたことになる。

Lunar Prospector

(上図)左上はVLA電波望遠鏡よって捉えられたM87中心部のジェット。囲いの領域をハッブル宇宙望遠鏡が可視光で観測した画像がその右の図である。ジェットは細長いビームとして中心から伸び出しているが、根元部の構造ははっきりしない。そこで、このジェットの中心部をVLBA電波望遠鏡でクローズアップしたのが下の画像である。

M87は地球から約5000万光年離れた楕円銀河で、強力な電波やX線が放出されている。その中心部からはジェットが吹き出しており、この中に太陽の数十億倍もの質量をもつブラックホールが隠されていると考えられている。問題は、このジェットがどのようなメカニズムで形成されているのかを探ることにある。そのためには、ジェットの形成領域を高分解能で観測することが重要であった。

Space Telescope Science Institute(USA) の研究グループは、VLBAと呼ばれる高分解能電波望遠鏡を用いてM87の中心部を観測し、ついに電波ジェットのビームが形成される領域を捉えた。このビームは数十分の一光年という狭い領域内で形成されており、この領域内ではビームの広がり角もかなり大きくなっていることがわかる。

このビームはブラックホールの強大な重力によって物質が落ち込む際、ブラックホールを取り巻く円盤が高速に回転することによって強い磁場が形成され、その影響で電子や陽子などの粒子がブラックホールの両極から吹き出しているようすを捉えていると考えられている。

<参照>
STScI-PRC99-43 October 27, 1999