長谷田さん、たて座に新星の可能性のある新変光星を発見

【2000年3月16日 VSOLJニュース(037)】

愛知県豊橋市の長谷田勝美さんは、3月5日にたて座を撮影されたフィルムに10.60等星の天体を発見され、2月6日に撮影されたフィルムにも12.0等で写っているものの、1998年8月から1999年8月までの5枚のフィルムには13等星以下で写っていなかったことから、新変光星 HadV46 という名称で VSOLJ (日本変光星観測者連盟) に報告されました。 このような変光星発見は近年アマチュア観測家によって盛んに行われるようになり、変光範囲からはミラ型変光星の可能性もありました。 しかしながら米海軍天文台の USNO カタログとの照合の結果、この天体がミラ型のような赤い星ではない可能性が指摘されました。

この報告を受けて、京都大学の植村・加藤は3月14日の晩にCCD測光を行い、その結果天体が実在すること、ミラ型のような赤色変光星の可能性が低いことが確認されました。 このCCD画像から九州大学の山岡氏の測定した位置は

18h 34m 03s.13 (J2000.0)
-14゚ 45' 12".2

で、USNO星表の該当位置に星が存在しないことが確実になりました。 この観測結果やパロマー写真星図との比較から、天体は少なくとも8-9等級は増光したことは確実で、色が赤くないことから新星の可能性が指摘されました。 また同星野は長野県の高見沢さんも何度も撮影されており、調査の結果この天体が 3月2日に9.9等まで明るくなっていたことが判明しています。 高見沢さんの1999年中の写真でも、14.5等より明るくなっていませんでした。 現段階で新星に特徴的な爆発的なガスの放出があるかどうかは確認されていませんが、新星あるいはそれに類似した爆発型の天体であることが期待され、スペクトル観測による確認が待たれています。

HadV46

VSOLJやVSNETにこれまでに報告された光度観測は以下の通りです。現在約11等星 で、少し大きな望遠鏡で見ることができるはずです。

YYYYMMDD(UT)   mag  observer
19960525.676  <130p  (長谷田)
19980816.522  <133p  (長谷田)
19981108.403  <133p  (長谷田)
19990219.822  <133p  (長谷田)
19990322.782  <131p  (長谷田)
19990413.776  <145p  (高見沢)
19990414.781  <145p  (高見沢)
19990506.615  <135p  (高見沢)
19990511.712  <145p  (高見沢)
19990609.663  <145p  (高見沢)
19990701.500  <140p  (高見沢)
19990706.615  <145p  (高見沢)
19990731.491  <145p  (高見沢)
19990803.519  <145p  (高見沢)
19990831.469  <145p  (高見沢)
19990831.483  <130p  (長谷田)
19990909.456  <135p  (高見沢)
19990927.415  <140p  (高見沢)
19991028.390  <140p  (高見沢)
19991029.397  <140p  (高見沢)
19991110.376  <140p  (高見沢)
20000206.844  120p  (長谷田)
20000209.840  122p  (高見沢)
20000211.844  120p  (高見沢)
20000216.833  118p  (高見沢)
20000302.797   99p  (高見沢)
20000305.810  106p  (長谷田) 発見
20000308.780  120p  (高見沢)
20000313.816  116p  (長谷田)
20000313.819  116p  (長谷田)
20000314.855  11.24C  (京都大学チーム)

VSNETでは以下のページを用意しました。 最近発表されたばかりの Tycho-2 星表を用いた12等級までの周辺比較星や、リアルタイム光度曲線が掲載されてます。 (なお最終的なURLは天体の分類によって変わる可能性があります)。

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/hadv46.html

この天体がもし新星と確認されれば、長谷田さんにとって初めての発見になります。 長谷田さんはこれまでにも多数の変光星を発見されていますが、その他にも長年にわたって見失われていた矮新星V893 Sco(さそり座V893)を再発見されています(IBVS 4585)。 この天体はその後の研究によって極めてまれな種類の激変星であることが明らかにされており、天文学価値の非常に高い再発見でした。

HadV46 清田誠一郎氏による画像