過去の火星に存在した水路跡 (SpaceDaily)

【2000年3月17日 SpaceDaily (2000/3/9)

マーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)の観測により、火星の原始海に流れ込んでいたと思われる水路の跡がみつかった。この水路跡は、現在は表面の土砂に覆われてしまって直接みることができない部分もあるが、火星表面の重力分布を詳細に観測することによりその全体像が浮かび上がってきた。


 

(図1)重力分布から浮かび上がってきた火星の水路跡。赤の領域は重力値の大きな領域で、下部にたくさんの物質が存在することを示す。逆に緑〜青の領域は重力値が小さく、その下部は低密度であるといえる。山地の上部から、右に向かって伸びる数本のブルーラインに沿って峡谷が形成され、その部分が削られて低重力領域になったと思われる。

MGSの重力計、高度計による観測結果の解析から、火星内部の構造が明らかになってきている。火星の表面重力は、その場所の高度や地形によって変化する。これらの値を補正することにより、火星の地殻の厚さを推定したり、内部にどのような密度の物体が埋め込まれているのかを計算することができる。

このようにして火星の内部に水路のような構造を思わせる低密度の領域が見つかってきたのである。火星表面には、峡谷を思わせる構造が数多くみつかっているが、火星の内部にもこのような構造がみつかったことで、原始の火星に海が存在し、その海に向かってながれ込んでいた水路の存在が一層現実味を帯びてきたといえる。

 

(図2)火星表面の高度分布図(メルカトル図法)。下が南極、上が北極を表し、左端から右端に向かって0度〜360度までの経度をとっている。

青が低地、赤が高地を表している。北半球は広くのっぺりとした低地に覆われていることがわかる。この低地は原始の火星において内部からの熱流量が大きかった地域に相当し、巨大な海嶺やそれを覆う海が存在したと思われる。そこで生成されたプレートは火星南半球に押し寄せられ、高地を作ったと考えられている。

 

(図3)火星表面の重力分布図。表記法は上図と同じ。

赤が高重力値、青が低重力値の場所を表す。MGSによる重力実測値をプロットしたもの。矢印の赤い領域に水路跡(図1)が見つかった。

 

(図4)モホ面(モホロビチッチ不連続面)までの深さ分布図。表記法は上図と同じ。

モホ面は地殻とマントルとの境界面のことで、この深さは地殻の厚さを反映している。重力の実測値(図3)から高度値(図2)による補正などを加えて、計算される。


<関連ニュース>
NASA Press Release

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