チャンドラが希少型ブラックホールを発見

【2000年3月21日 NASA Chandra Press Room (2000/3/20)

国際天文学者チームがNASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」を用いて、2型クエーサー(Type 2 quasar)と呼ばれる希少型ブラックホールの存在の有力な証拠を得た。

発見された2型クエーサー。左=チャンドラによるX線画像/右=ハッブルによる可視光画像

(画像左) チャンドラによるX線画像。一見広がって見えているが、これは観測の影響であり、実際には点状のX線源であると考えられる。
(画像右) ハッブル宇宙望遠鏡による同領域の可視光画像。チャンドラによる画像・ハッブルによる画像ともに同じスケールで、どちらも10秒角四方。(画像提供=NASA)


ケンブリッジ天文学協会のAndrew Fabian氏およびダラム大学のIan Smail氏を中心とするこのチームは、チャンドラ、ハッブル宇宙望遠鏡、およびハワイ・マウナケア山のジェームズ・クラーク・マックスウェル・サブミリ波望遠鏡を用いて2つの銀河の周辺を徹底捜索した。これは2つの銀河による重力レンズ効果を遠方天体の発見に利用しようとする試みで、今回の捜索により4つのX線源および7つのサブミリ波源が発見された。

このうち最も明るいX線源は遠方銀河の中心に発見されたものだが、この強力な点状X線源は軟X線(低エネルギーX線)を欠いていた。この欠損は厚いガス雲による吸収の影響だと考えられる。また、この天体は可視光においては一見普通に見えた。これらから、この天体は純粋な2型クエーサーであると考えられた。

2型クエーサーの存在はいわゆる統一クエーサー・モデル理論から予言されており、今回の発見はこの理論を支持するものだ。またこの発見はX線およびサブミリ波での宇宙背景放射の謎を明らかにする手がかりともなる。2型クエーサーの発見はこれまでも他の研究者により報告されたことがあるが、そのデータは不明瞭なものであった。そして今回新たにチャンドラの力を得て、明瞭なデータを得ることができた。

統一クエーサー・モデル理論によると、銀河中心ブラックホールの周りにはガスとダストの厚いドーナッツ状の雲があり、この雲の穴の部分を通してブラックホールを見るか、厚い雲を通してブラックホールを見るかで見え方が変わってくる。2型クエーサーと呼ばれる極端な例では可視光や軟X線の放射はほとんど吸収されてしまい、硬X線(高エネルギーX線)のみが雲を貫通できる。このとき吸収された可視光や軟X線の放射のエネルギーは雲に赤外線やサブミリ波での放射を引き起こす。

また、7つ発見されたサブミリ波源のうち6つはX線では観測できなかった。これは、銀河中心ブラックホールが異常に厚い雲に覆われているか、または星形成によるバーストなどの他のサブミリ波源を含むためと考えられる。