HSTがとらえた輝く目、惑星状星雲NGC 6751 (HST)
【2000年4月6日 NASA HST STScI-PRC00-12 (2000/4/6) 4月7日 更新】
ハッブル宇宙望遠鏡によりとらえられた「わし座」にある惑星状星雲NGC 6751の画像が公開された。まるで巨人の目のようなこの星雲は、中心に見える熱い恒星から数千年前に放出されたガスだ。
惑星状星雲は小型望遠鏡で見ると円形に見えるためそう呼ばれているが、その正体はもちろん惑星などではない。我々の太陽と同程度の質量の恒星は、死期近づくと大量のガス放出を行う。このとき恒星の外層が失われ、熱い恒星の殻が露出する。この殻からは強力な紫外線が放射され、この紫外線はを受けた周囲のガスが励起されて輝きを放っているのが惑星状星雲である。我々の太陽も、今から60億年ぐらい後にはこのような惑星状星雲を形成すると予想されている。
今回の観測は、1998年にアメリカ海軍天文台に所属するArsen Hajianらのチームにより、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)に搭載された広視野/惑星カメラ2(Wide Field Planetary Camera 2, WFPC2)を使って行われたもの。
この星雲にはいくつかの驚くべき特徴がある。青い領域はもっとも高温で輝いているガスで、中心の恒星核のまわりに粗い円形リングを形作っている。オレンジ色および赤色の領域は、比較的低温のガス。この低温ガスは中心の恒星から外に向かって筋を形作っているように見え、星雲の外殻にはぼろぼろのリングを形成している。この低温ガスの起源はよくわかっていないが、筋構造の存在はガスの形状に中心の恒星からの放射や恒星風が強く影響している明らかな証拠である。中心の恒星の温度は140,000℃と見積もられている。
Hajian氏のチームは2001年にHSTのWFPC2を使ったNGC 6751の観測を再度予定している。この星雲は毎秒40kmという速度で拡散を続けており、2001年の観測では1998年の観測に比べて少し大きくなっていることが期待される。ハッブルによる大きさの変化の測定は、NGC 6751星雲までの精密な距離を決定する助けとなる。今のところ、地球からNGC 6751までの距離は大体6,500光年と見積もられている。また、NGC 6751の直径は0.8光年ほどで、これは我々の太陽系の直径の600倍程度。
(画像提供=NASA, ハッブル・ヘリテージ・チーム)