大質量星の進化
【2000年4月13日 国立天文台・ニュース(340)】
太陽の数10倍もの質量がある大質量星の進化の状況がかなりはっきりしてきました。
質量がもっとも大きいクラスの恒星は、明るさは大きいのですが、一方、非常に不安定で、ときに短期間の爆発をして、超新星爆発に匹敵するほどの質量とエネルギーを放出します。 しかし、この爆発で星の一生が終わりになるわけではありません。
たとえば、「りゅうこつ座イータ星(イータ・カリーナ)」はこのような大質量星のひとつで、ハッブル宇宙望遠鏡による写真では、星の周囲に、二個のだんごを串刺しにしたような形の人形星雲(Homunculus nebula)を形成していることがわかります。 この星雲は、1843年の爆発増光のときに放出された物質によるものでしょう。 イータ・カリーナのように明るく青い不安定な変光星(Luminous Blue Variable; LBV)は現在10個あまりが確認され、ほとんどが人形星雲のような軸対称の星雲を伴っています。 球対称ではありません。
恒星があまりに明るいときは、内部からの光の放射圧が重力を超え、星の外層部を吹き飛ばす状況が起こります。 この安定を定める条件をエディントン限界といいます。 LBVの爆発は、放射圧がエディントン限界を超えたときに起きます。 軸対称の星雲は、自転している星がエディントン限界を超えたときに作られることが、モデル計算で示されています。
こうして外層を吹き飛ばしてしまうため、中心核がむき出しに近いウォルフ・ライエ星に進化するLBVもあります。 ただし、この場合の最終質量はそれほど大きくはありません(太陽質量の10倍以下)。
いずれにしても、大質量星の中心部には最後に鉄の核が生成され、その質量と角運動量によってその後の運命が決まります。 質量が小さいときは、超新星爆発を起こして中性子星が残ります。 質量が大きく角運動量が小さいときは全体がブラックホールにつぶれます。 角運動量が大きいときは、遠心力が物質の落ち込みを妨げ、コンパクトな円盤を形成して、重力エネルギーをニュートリノとして放射する、あるいは磁気流体力学過程により、細いビーム状に放出するという特別な状態になります。 これはガンマ線バーストを起こす候補天体です。 LBV時代に安定していて爆発を起こさず、ウォルフ・ライエ星にならなかったものだけがガンマ線バーストを起こす可能性があるのかもしれません。 そうだとすると、星の外層部に重元素が少ないほど星は安定して、ガンマ線バーストを起こしやすくなるはずです。 ガンマ線バーストが遠い初期宇宙に多いのはこれが理由とも考えられます。
参照 | MacFadyen, A.I, et al., |
The Astrophysical Journal 524,p.262-289(1999). | |
Langer, N., Science 287,p.2430-2431(2000). |