初期宇宙の詳細な姿がとらえられた
【2000年5月2日 NASA Space Science News (2000/4/27)】
ブーメラン(BOOMERamG)と呼ばれる国際プロジェクトが、初期宇宙の詳細な姿を捉えることに成功した。
ブーメラン・プロジェクトにより得られたマイクロ波宇宙背景放射の詳細分布。南天の1800平方度程度の領域で、全天の約3%にあたる。右下の黒丸は、満月の大きさを示している。(画像提供=The Boomerang Collaboration)
BOOMERanGは"Balloon Observations of Millimetric Extragalactic Radiation and Geophysics"の略で、「ミリ波・銀河系外起源放射および地球物理学の気球観測」の意。このプロジェクトでは1998年の終わりに、超高感度望遠鏡を巨大なヘリウム気球(容積80万立方メートル)にぶらさげ、南極地方上空37km(大気圏のごく上層)を10日半かけて周回飛行させた。これにより、マイクロ波宇宙背景放射(Cosmic Microwave Background; CMB)の詳細な模様を得ることに成功した。
マイクロ波宇宙背景放射は、ビッグバン理論からその存在が予言されたもので、宇宙の初期、宇宙が現在の1000分の1程度の大きさの火の玉であったときの名残の放射である。1965年にはその存在が実際に確認され、絶対零度よりもわずかに高い3K程度の温度で宇宙のあらゆる方向から等方的に放射されているのが観測された。
1991年にはアメリカの宇宙背景放射探査衛星COBE(COsmic Background Explorer)の観測により、全天にわたっての大まかな揺らぎの分布が得られた。だが、COBEの観測により得られた分布図は、まだピンぼけ画像のようなものに過ぎなかった。
そして今回ブーメラン・プロジェクトにより、はじめてシャープな分布図が得られた。
宇宙は現在膨張を続けているが、ビックバン宇宙を記述するアインシュタイン方程式によると、宇宙の未来に関しては、「閉じた宇宙」「開いた宇宙」「平坦な宇宙」の3種類のシナリオが考え得る。
「閉じた宇宙」は、宇宙の膨張速度に比べてそれに含まれる質量が大きく、未来のある時点において膨張がストップし、逆に収縮に転じ、最後は宇宙の全てが1つの特異点に収束する「ビッグクランチ」で終わる。
「開いた宇宙」は、宇宙の膨張速度に比べてそれに含まれる質量が小さく、永遠に膨張を続ける。
「平坦な宇宙」は、宇宙の膨張速度とそれに含まれる質量が均衡しており、膨張速度を減じながら永遠に膨張を続けるが、ある一定の大きさ以上にはならず、また決して収縮には転じない。
そして、今回ブーメラン・プロジェクトにより得られたマイクロ波宇宙背景放射のゆらぎの分布は、宇宙が「平坦な宇宙」であると仮定した場合予想される分布と非常によく一致していた。
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