第4回CCDカンファレンス CANP2000 レポート

【2000年5月29日 アストロアーツ】

冷却CCDユーザーが一同に集まる「第4回CCDカンファレンス CANP2000」が、5月20、21日の両日にわたって東京で開催された。冷却CCDカメラで活躍中の岡野邦彦氏や川崎誠志氏らが中心となって運営しているCCD（CCDアストロノミーネットワーク）の主催で、SBIGの副社長バーバー氏や、国立天文台の福島英雄先生など多彩な講師陣を招き、2日間計12時間みっちりと濃い内容がやりとりされた。

CANはメーリングリストを使って情報交換をしているが、文章だけでは伝えきれないニュアンスや、突っ込んで聞いてみたいテクニックなど、会員がふだん抱えている問題点を解消すべく、年に1回開催されるのがCANPで、今年で４回目の開催となる。

会場に展示された天体画像のハードプリントを比較するという試みもネット上ではできない。「高画質化が進む写真画質プリンタはどこまで使えるのか」をチェックするために、ネット上で配布されたＭ42の画像データを会員各自のプリンタで出力し、その結果を持ちよってボードに貼りだし比較検討しようというわけだ。印刷された比較レポートでは評価しにくい細かな質感の差をじっくり見ることができた。

CANPは、あくまでもアマチュア主体の会だが、メーカーも新製品の紹介やデモなど積極的に参加している。SBIGは、昨年のCANPで発表を行なった冷却CCDカメラ「STV」を紹介。STVはオートガイダーとしても使える高感度冷却CCDビデオカメラだ。ビットランも新製品を発表した。従来のBTシリーズをさらに高性能化させたBT200シリーズがそれ。USBに対応し、BJシリーズのカメラヘッドをオートガイダーとして使う機能などを搭載している。35ミリ判と同サイズの600万画素のハイスペックカメラヘッド（コントローラとのセットで200万円前後）をはじめ、ラインナップも充実した。武藤工業の冷却CCDカメラ製造・販売中止を受けて、CVシリーズのサポートを引き継いだ光映舎は、現行カメラヘッドのEチップへの換装や、Eチップ搭載モデルの試作機を発表した。先日発表のあった富士写真フイルムの一眼レフカメラ型デジタルカメラS1も実機が参考出品され、バルブ撮影による天体写真も紹介された。S1は冷却機能を持たないが、デジタルカメラもここまで来たか！　と思わせる画像だった。

冷却CCDカメラを取り巻く環境はここ数年で急速に充実してきた。ハード、ソフトそれぞれの進化に加え、それらを使いこなすノウハウの集積によって、当初から言われてきた命題「冷却CCDは銀塩にどこまで近づけるか?」への答えの方向性が見えてきた。部分的には銀塩以上のパフォーマンスを示すデジタル天体画像の本質は、天体写真という作品を創る過程を作者の手に取り戻す作業にほかならないのではないか?　ということだ。表現手段が作者の手の中にあり、結果が過程に反映されるという達成感こそ趣味の趣味たる由縁だと思うからだ。

座談会では山田啓作氏の広角銀塩写真に、岡野邦彦氏の冷却CCD画像の拡大撮影した銀河画像を貼りつけたコラボレーション作品が披露されたが、これもその命題への答えのひとつだ。星野部分はなめらかでシャープ、かつ銀河は超分解という今までに見たことの無い天体写真は、銀塩と冷却CCDのどちらが良いかといった議論を押しのけ、新世紀の始まりを感じさせるものであった。

またCANP恒例のDIPOTY(デジタル・イメージング・プロダクツ・オブ・ザ・イヤー)も、会に参加できない会員の事前の投票と、当日の参加者の投票により次のように決定された。この一年に冷却CCDユーザーがもっとも役に立ったと思うもの、または欲しいと思ったものだ。ユーザーからメーカーに対する熱いエールだ。