火星探査ローバーの試作機がネバダの砂漠で試験された
【2000年6月26日 FLORIDA TODAY Space Online / AP (2000/6/26)】
5月に、FIDOと呼ばれる火星探査ローバー(自走式探査機)の試作機が、アメリカ・ネバダ州中央の荒涼とした一帯で運用試験された。試験では実際の火星探査を模し、ローバーの所在を知らされていないパサディナの管制室から、NASAのジェット推進研究所(JPL)の衛星を介してローバーがコントロールされた。試験中、6輪の車輪の1つが動かなくなり、試行錯誤した結果、車体下部のカメラでついに障害物となっている岩を発見、これを避けて再び前進をはじめるなど、貴重な経験が得られた。
FIDOは1997年のマーズ・パスファインダー・ミッションで火星上を走行したソジャーナーのおよそ倍の大きさ。同じ6輪であるなど類似点も多いが、能力ははるかに高い。ソジャーナーが計330フィート(約11メートル)しか走行しなかったのに対し、FIDOは何マイル(1マイル=約1.6km)も走行可能。ソジャーナーが高さ6インチ(約15cm)の障害物を越えられなかったのに対し、8インチのタイヤを装備したFIDOは高さ12インチ(約30cm)までの障害物を乗り越えることができる。ソジャーナーが4インチ動くごとに停止して周囲の状況を調べる必要があったのに対し、FIDOは5フィート(1.5メートル)先の障害物まで検知できるため、高速な車輪と合わせ、平均時速0.13マイル(時速約210m)というソジャーナーの10倍の速度で走行することが可能だ。
昨年、マーズ・クライメート・オービターとマーズ・ポーラー・ランダーの2つのミッションが失敗に終わり、NASAの火星探査計画は大きな修正を迫られているが、7月にも修正計画が発表される予定。修正計画では、2003年の打ち上げに向け、NASAは大型火星オービター(軌道上周回型の探査機)または火星ローバー(マーズ・パスファインダーと同様、エアバッグによる着陸方式を採る)のどちらか一方のプランが選択される。
NASAはFIDOを含め6機の試作ローバーのために、既に120万ドルほどを計上している。もしローバー案が選択された場合、それらで得られた経験は、実際に火星上を走行する「アテナ・ローバー」に活かされることになる。
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