木星探査機ガリレオ、エウロパに巨大クレーターを発見
【2000年7月14日 Galileo Project (2000/7/10)】
現在木星系を周回探査中のNASAの木星探査機「ガリレオ」が、木星の衛星「エウロパ」に巨大な衝突クレーターを発見した。
画像で色の付いた部分は、ガリレオの近赤外線地図化分光器(Near Infrared Mapping Spectrometer)による疑似カラー画像。中央やや右に大きなクレーターがあるのがわかる。円形構造の全体の大きさは直径80kmほどで、クレーター内部のやや暗い部分は直径29kmほど。彗星または小さな小惑星の衝突により形成されたと考えられる。
画像で赤の強い部分は、純度の高い水の氷が豊富に含まれていることを示し、逆に青い部分は、水の氷以外の物質が豊富であることを示す。その水以外の物質が何であるかは未だ議論の対象だが、塩分を含む海水の蒸発により残された鉱物を含むとか、硫黄酸化物を豊富に含むとかいわれている。衝突クレーターの赤いリングは、衝突により地下からえぐられた水の氷で覆われている。クレーター内部のやや暗い領域には、衝突した天体に含まれていた物質が残されているかもしれない。今後の研究により、衝突天体の正体や、エウロパ表面の化学組成について、新たな事実がわかるだろう。
エウロパ表面には直径20kmを超えるようなクレーターは珍しく、1999年までにわずか7個しか見つかっていない。クレーターの数は地表が形成されてからの年数と関連するもので、エウロパ表面にはクレーターが少ないことから、エウロパの地表は地質学的にみれば、ひじょうに新しい可能性がある。
この画像の大きなクレーターの東側には、より小さく不明瞭ながら、2個ないし3個のクレーター状の構造が見られる。このことから、この大きなクレーターは、一連の連続したクレーター群の1つなのかもしれない。
エウロパの地下深くには液体の海が存在し、そこに原子的な生命が存在する可能性があるといわれており、エウロパ地表の研究は多大な興味の対象となっている。今後、エウロパを周回する探査機の計画もあり、新たな探査機の活躍により今回観測された地域についてもより多くのことがわかるだろう。
ガリレオは1998年5月31日、木星第15周目にこの画像を撮像したが、データ転送は16周目まで数回に分けて行なわれ、最終的に完全な画像を得るためのデータの合成および処理には1999年までかかった。現在、研究が進められている。
画像提供: NASA / JPL