パルサーの歳差運動が初めて検出された

【2000年8月4日 マンチェスター大学・ジョドレルバンク天文台プレスリリース PR0003 (2000/8/2)

マンチェスター大学のジョドレルバンク天文台のチームが、同天文台の「ラベル電波望遠鏡」(口径76m)による、パルサー「PSR B1828-11」に関する13年間の観測データを分析した結果、このパルサーがおよそ1000日周期で歳差運動を行なっていることが判明した。

パルサーは、短い周期で規則的にパルス状の電磁波が観測される天体で、その正体は、超新星爆発を起こして死んだ恒星の核の名残りである中性子星だ。直径は10〜20kmほどだが、質量は太陽ほどもある。高速で自転(PSR B1828-11の場合は秒間2.5回転)しながら、磁極からサーチライト状に電磁波を放出しており、この電磁波の放射が地球を向いたときにパルスが観測される。

中性子星は、ほとんどが中性子の超流動体で出来ているが、表面は固い。現在の理論では、内部の超流動体と、固い表面との干渉から、中性子星の歳差運動はひじょうに短期間で収束してしまうと言われている。歳差運動とは、高速回転するコマの回転軸が、首を振るように運動するのと同様の運動。しかし、PSR B1828-11は誕生から10万年ほど経過しているにもかかわらず、歳差運動を行なっていたため、天文学者らを驚かせた。

8月3日発行のイギリスの科学誌『ネイチャー』でマンチェスター大学のチームが発表する論文では、この歳差運動の存在は、中性子星が完全な球体ではなく、ごくわずかにふくらんでいることを示唆するのではないかとしている。ただし、そのふくらみは本当にわずかで、20kmあたり0.1mm程度に過ぎない。これは、地球の大きさの球体の場合、3cm程度に相当する。しかし、その考えはひとつの可能性でしかなく、なぜこの中性子星が歳差運動を行なっているのかについての研究は始まったばかりであり、今後の研究が望まれる。