3月に爆発した中国製ロングマーチ-4ロケットの残骸が検出された
【2000年8月30日 シカゴ大学ニュース】
1999年2月に打ち上げられたアメリカ空軍の先端研究および地球観測衛星(Advanced Research and Global Observation Satellite; ARGOS)に搭載された宇宙ごみ観測装置(SPADUS)が、2000年3月に爆発を起こした中国製ロングマーチ-4ロケットの残骸を検出することに成功した。残骸は、無数のひじょうに小さな破片の群れとなって広い範囲に漂っている。SPADUSは、シカゴ大学が制作した観測機器だ。
問題のロングマーチ-4ロケットは、1999年に成功のうちに打ち上げられたものだが、2000年3月11日、役目を終えてから5か月の間、人工衛星として宇宙を漂っていたロケットの上段ユニットが爆発を起こした。この爆発はアメリカ宇宙軍により即座に検出され、宇宙軍では爆発により生じた300個以上の破片を確認した。しかし、宇宙軍で検出・追跡が可能なのは、直径およそ4インチ(10cm)程度の大きさの破片までであり、それ以下の小さなものは検出できない。衛星の爆発により生じた細かな破片が検出されたのは今回が初めてだ。
爆発を起こした上段ユニットは、残存していた燃料が原因で爆発を起こしたと考えられる。同様の問題はおよそ20年前より知られており、アメリカ製のロケットの上段ユニットも同様の爆発を起こした例がある。多くのロケットの上段ユニットは、衛星を軌道投入後はそのまま宇宙空間を漂うようになっており、これが爆発を起こすと多数の宇宙ごみが広い範囲にまきちらされることになる。しかし、今では対策が進んだため、このような爆発は少なくなっている。ロングマーチ-4ロケットは、1990年に打ち上げられたときも、その後宇宙を漂っていた上段ユニットが爆発を起こした。中国ではその後同様の爆発が起こらないよう対策を行なっていたが、対策はうまくいっていなかったようだ。
地球軌道上の宇宙空間で人工衛星が、高速で漂う人工の宇宙ごみや自然の小片と衝突することは珍しいことではない。このような衝突は多くの場合大事にはいたらないが、常時、衛星に小さなダメージを与え続けている。NASAのジョンソン宇宙センターの宇宙ごみ研究チームのチーフ科学者であるNicholas Johnson氏によると、こういった衝突によるキズから、平均してスペースシャトルのフライト1回ごとに1枚の窓ガラスを交換しているという。またSPADUSプロジェクトのリーダーであるAnthony Tuzzolino氏によると、SPADUSは打ち上げから1年間のうちに195回のそのような衝突を検出している。しかも、そういった衝突のほとんどが自然の小片ではなく人工の宇宙ごみによるものだそうだ。このような衝突は、宇宙遊泳中の宇宙飛行士にとっては脅威であることもあり、NASAは宇宙軍が追跡できない小さな破片の分布を知りたがっている。
SPADUSのチームとジョンソン宇宙センターの合同研究から、ロングマーチ-4ロケットの上段ユニットとARGOS衛星の軌道が近づくときに衝突が多く検出されることが判明した。特に、2000年3月25日から4月1日の間には、およそ40回もの衝突が検出されていた。上段ユニットはARGOS衛星より約60マイル(97km)下方の軌道を漂っていたが、このような爆発現象においては高い軌道まで破片がまきちらされることがよく知られている。このことから、これらの衝突がロングマーチ-4ロケットの上段ユニットの残骸に起因するものであると結論された。なお、SPASUSは1mmよりずっと小さな破片との衝突まで検出可能。