太陽観測探査機SOHOによる彗星発見数が200個に達した

【2000年8月30日 NASA Space Science News (2000.8.28)

アメリカ航空宇宙局(NASA)とヨーロッパ宇宙機関(ESA)の共同の太陽観測衛星SOHOによる彗星発見数が、200個に達した。

SOHOの観測画像から発見された200個目の彗星、通称「SOHO-200」を発見したのは、イギリスのアマチュア天文家、Michael Oates氏だ。Oates氏は、インターネット上で一般公開されているSOHOの観測画像から彗星を発見した。

24時間継続して太陽を観測しているSOHOは、太陽をかすめる軌道を持つ彗星――クロイツ・サングレーザー彗星群――を多数発見している。およそ100年前、ドイツのクロイツ氏が、太陽をかすめる軌道を持つ彗星の多くが同じ方向から飛来していることに気付いたことから、こう呼ばれている。サングレーザーとは、太陽をかすめる者という意味だ。クロイツ彗星群は、過去に、大きな彗星が太陽に近づいた際に、太陽の巨大な重力の潮汐力により引き裂かれて生成されたと考えられている。このような彗星の分裂現象は、1994年木星に近づきすぎて重力により引き裂かれ、バラバラになって木星に落下したシューメーカー・レビー第9彗星の例が有名。なお、SOHOが発見したクロイツ群の彗星のほとんどは、今回のSOHO-200も含め、太陽に接近した際に太陽付近の強烈な熱放射により燃え尽きている。

SOHOによる彗星発見のほとんどは、LASCOと呼ばれる観測機器の画像による。LASCOは太陽の周囲2000万kmをカバーする広角分光コロナグラフ。コロナを観測するために太陽はマスクにより隠されている。LASCOの目的は太陽からのガス放出を監視することで、彗星の発見は副次的な成果。発見の多くはSOHOの観測チームによるが、SOHOの画像は最新のものも含めて全てインターネット上で一般公開されているため、今回のSOHO-200のように、アマチュア天文家がそれらの画像から新彗星を発見する例も多い。

SOHOについで彗星発見数が多いのは、自動で地球に接近する可能性を持つ小惑星の捜索を続けているリンカーン地球近傍小惑星捜索プロジェクト(LINEAR)だが、LINEARによる彗星発見数は50個程度であり、SOHOには全く及ばない。なお、個人による発見数ではCarolyn Shoemaker博士がもちろんトップで、その発見数はおよそ30個である。

SOHOのLASCOには、視野のより広いLASCO C3と、視野のやや狭いLASCO C2の2基がある。今年の夏以前までに発見されていたほとんどのSOHO彗星は、視野の広いC3の画像から発見されたものだった。C2の狭い視野にとらえられるまで太陽に接近した彗星は、動きがひじょうに速いが、LASCO C2による撮影は30分ごとであり、それらの彗星を十分とらえられるほど短い間隔では撮影していないため、C2の画像から新彗星を発見するのは困難ではないかといわれていた。

しかし、今年2月の終わり、SOHO-100が発見されてすぐ、ゴダード宇宙飛行センターの太陽物理学者であるDoug Biesecker氏は、Oates氏に、C2の過去画像に未発見の彗星が残されているかもしれないとのEメールを送った。このことからアマチュア天文家の間でC2の過去画像から新彗星を探す動きが広まり、最近発見されたSOHO彗星の実に2/3近くがC2の画像から発見されたものという結果になった。今回のSOHO-200も、C2の1997年の観測画像から新たに発見された。

Biesecker氏によると、クロイツ群の彗星は、太陽半径の10倍〜12倍の距離にまで太陽に近づいたときに最も明るく見える傾向がある。しかし、毎年5月〜7月の間は、クロイツ群の彗星がこの位置にあるときは彗星はC3の太陽を隠すマスクに隠れてしまう位置になってしまうため、C3での発見は難しくなる。だが、C2は太陽を隠すマスクがC3に比べて小さいため、C2なら観測可能となる。また、彗星軌道と地球の位置関係から、この時期は彗星の動きが見かけ上、ゆっくりとなる。したがって、毎年5月〜7月の間だけはC3よりC2の方が彗星捜索に適しているという。

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