直径約0.5kmの小惑星が地球とニアミス
【2000年9月4日 NASA Space Science News (2000.9.1)】
9月1日、直径約0.5kmの小惑星が、地球〜月間の距離の12倍程度の距離まで地球に接近した。宇宙的スケールから見れば、これはニアミスといってもよいぐらいの近距離だ。しかし心配は無かった。事前の観測から、衝突の危険性が全く無いことがわかっていたからだ。そして地球近傍小惑星の研究者たちにとっては、今回の接近は地球近傍小惑星(Near Earth Asteroid; NEA)を近距離から観測できる良い機会となった。
今回接近した小惑星は――研究者の間では「2000 QW7」と呼ばれるが――8月26日、NASAのジェット推進研究所(JPL)の地球近傍小惑星追跡システム(NEAT)により発見された。この発見はNEATプロジェクトの研究者たちの注意をひいた。移動が高速で、NEAとしては例外的に明るかったからだ。その明るさは13等級で、これはアマチュア向けの口径20cm以上の望遠鏡なら容易に観測できる明るさだった。
NEATプロジェクトの主任調査員であるEleanor Helin氏によると、「2000 QW7」は地上からNEAを観測する絶好の機会を与えてくれているという。ひじょうに明るいため、現在から今年後半まではアマチュア観測家たちでも充分に観測可能なのだ。数多くの観測から、軌道要素や色、明るさの変化曲線などが詳細に求められることが期待される。
地球近傍天体(Near Earth Object; NEO)とは、地球軌道に近い軌道、または地球軌道の内側から外側にまたがるような軌道を持つ天体(小惑星または彗星)のことだが、「2000 QW7」はその中でも、潜在的危険を持つ小惑星(Potentially Hazardous Asteroid; PHA)と呼ばれるグループに分類されるという。
JPLの地球近傍天体プログラム事務局の責任者のひとりであるDonald Yeomans氏によると、PHAは、0.05天文単位(1天文単位とは太陽〜地球間の平均距離で、約1億5千万km)まで地球に接近する軌道を持ち、直径200〜300mよりも大きな小惑星のことで、現在のところ266個のPHAが発見されているそうだ。
実は、PHAの地球接近はかなり頻繁に起きている。最近1か月だけみても、4個のPHAが0.038天文単位〜0.084天文単位(地球と月の間の距離の15倍〜33倍)にまで地球に接近している。
Yeomans氏によると、発見されているPHAで、近い将来に地球に衝突する危険のあるものは無い。だが現在のところ地球衝突の危険が無いPHAであっても、長期的に見れば衝突の危険性は否定できないという。なぜなら、地球や月、木星などの重力の影響から、PHAの軌道に予測不能な揺らぎが生じ、その結果地球衝突軌道に乗ってしまう可能性があるからだ。したがって、継続的な監視が不可欠である。