ハッブル、近傍銀河の星生成領域をクローズアップ

【2000年10月10日 STScI-PRC00-30 (2000.10.5)

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたマゼラン雲の星生成領域N81

NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた近傍銀河の星生成領域の画像が公開された。この画像は、私たちの銀河系の伴銀河である「小マゼラン雲」の中の「N81」と呼ばれる領域で、星の揺りかごであるガス星雲の中にいくつもの若い星たちが輝いているようすがわかる。

これらの青く輝く若い巨星は、強い恒星風や衝撃波を放出し、周囲のガスを吹き飛ばして星雲の中に中空の領域を作り出している。星雲中央でひときわ明るく輝く2つの近接した巨星は強烈な紫外線を放射しており、星雲はこの紫外線放射を受けて輝いている。

星雲に見られる黒い筋は、星雲の外縁領域の冷たい雲で、主に水素分子とチリから成る。このような冷たい雲は輝かないため通常は見えないが、ここでは背後に輝く星雲があるためにシルエットとなって浮かび上がっている。新しい星は、このような高密度な暗黒星雲の中で重力によりガスやチリが集まって誕生すると考えられている。

小マゼラン雲の化学組成はわれわれの銀河系のそれとは大きく異なり、水素とヘリウムを除く元素はわれわれの銀河系に比べて10分の1程度の割合しか存在していない。これは、非常に遠方の銀河、つまり若い銀河と似た組成であるため、天文学者たちは小マゼラン雲における星生成の研究から、宇宙が今に比べてずっと若いころの星生成のようすを探ろうとしている。

1997年9月、広視野/惑星カメラ2による撮影。酸素の放つO-III光、水素の放つHα光・Hβ光をそれぞれ透過する3種類のフィルターによる画像からカラー化。

Credits: NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)