ヒッパルコスに続くアストロメトリー衛星
【2000年10月19日 国立天文台・ニュース(386)】
ヒッパルコス衛星の後を継ぐ形で、天体位置精密測定のためのアストロメトリー衛星の打ち上げがつぎつぎに計画されています。 DIVA計画、ガイア(GAIA)計画がそれらに当たります。
1989年にヨーロッパ宇宙機構(ESA)が打ち上げた高精度視差観測衛星ヒッパルコスは、予定の静止軌道投入に失敗したにもかかわらず大きな成果を挙げ、これまでにない高精度で100万星以上の恒星の位置、年周視差、固有運動を測定しました。 その成果がヒッパルコス、ティコの二種の星表にまとめられているのは皆さんよくご存知のことでしょう。 ESAはこれに続く計画として、GAIA計画を推し進めています。 2012年に打ち上げ予定のGAIAは、銀河系内だけでなく銀河系外も含め、約10億星の位置などを、ヒッパルコスの100倍の精度で測定する予定で、非常に野心的な計画です。
これに対し、ドイツ宇宙機構(German Space Agency)は、GAIAに先だって、やはりアストロメトリーのためのDIVA(German Interferometry for Multichannel Photometry and Astrometry)衛星打ち上げの計画を発表しました。 DIVAはちょうどヒッパルコスとGAIAにはさまれる20年間の空白を埋める形で、やはり銀河系内外の3500万星を、ヒッパルコスの5倍の精度で測定しようという計画です。 衛星打ち上げ予定の時期はまだはっきりしませんが、ここ数年のうちと思われます。 このDIVA計画は、ドイツX線衛星ABRIXASIIや、ガンマ線観測衛星MEGA(Medium-Energy Gamma Ray Astronomy)を押さえて、トップの重要度にランクされました。 位置天文学についての歴史と伝統を誇るドイツ宇宙機構が、いかにこの計画を重要視しているかがわかります。 この計画にはほぼ1億ドイツマルク(4500万ドル相当)の経費が見込まれています。
高精度の位置観測は、単に恒星の位置を高精度に知るだけにとどまらず、ハッブル定数の決定に、また暗黒物質量を推定して銀河系の質量を正確に知る上にと、天文学全体に大きな意味をもつものです。 そうした点からも、天文学関係者はこれらDIVA計画、GAIA計画の進展を、期待をもって見まもることになるでしょう。
参照 | Abbott, A. Nature 407,p.665(2000). |
Abbott, A. Nature 407,p.277(2000) |