今年のしし座流星群は月に注目!?

【2000年10月31日 Science@NASA (2000.10.26)

ほとんどの流星観測者たちは、今年のしし座流星群の活動ピーク期間に明るい月光があることを残念に思っている。明るい月光は夜空を照らし、多くの暗い流星の光をかき消してしまうためだ。しかし、一部の流星観測者にとって、その月はメインイベントとなるかもしれないのだ。

「世界時11月17日午前5時(日本時間11月17日午後2時)ごろ、月がテンペル・タットル彗星が1932年に回帰した際に放出したダスト帯の中心から地球直径の約4倍ほどの距離を通過します。これは、今年の地球からあらゆるダスト帯の中心までの距離と比較するとずっと近距離です。」というのは、かのデイビッド・アッシャー博士の弁。アッシャー博士は、1999年のしし座流星群の予報をピタリ的中させたことで有名である。アッシャー博士の予報では2000年のしし座流星群は地球では特に大きな活動は見られないということだが、月面では活発な活動が見られるかもしれないのだ。

流星の母体となる物質が月に突入した際には、もちろん流星とはならない。流星とは、質量1グラム程度の微細なチリ (流星物質) が高速で大気に突入した際に大気との摩擦により過熱されておもにプラズマ発光する現象だが、月面には大気は存在しないからだ。その代わり、月に突入した流星物質は、毎時22万キロメートルにも達する高速で月面に直接激突し、その際に強い発光現象を引き起こす。

この発光現象は、1999年のしし座流星群の際に何人かの観測者により初めてビデオ撮影された。観測数は、少なく見積もって計6個以上。明るさは最大3等級程度と比較的暗いのだが、ビデオには明瞭にとらえられた。

今年も月は1999年のしし座流星群の際と同程度の距離までダスト帯に接近するのだが、今年はそのしし座流星群による月面発光を直接とらえることは残念ながら困難かもしれない。なぜなら、流星物質は今年は主に地球から見て月の裏側に衝突するためだ。

しかし、科学者によると、月におけるしし座流星群の活動を間接的に知ることは可能という。

ボストン大学の画像科学チームのジョディ・ウィルソン氏によると、「流星物質が月面に激突する際、ある程度の岩やチリを気化させ、月の岩に含まれるナトリウムを含むガスが噴き上がります。このナトリウムは太陽光をよく散乱させるため、地球から見た場合の月の縁の近くに流星物質が衝突した場合は、その噴き上がったガスが観測できるかもしれません。それは、淡い低圧ナトリウムランプのような輝きに見えるでしょう。」

さらに、流星による月面発光現象を直接観測できるかもしれないチャンスが、近年に控えている。それは、2001年のしし座流星群のときだ。このとき、月は新月を2日過ぎたところなので、流星物質は地球から見て月の表側に衝突する。そして、地球から見た月の大部分には太陽光があたっていないため、絶好の観測条件となる。アッシャー博士の予報によると、2001年には地球・月ともダスト帯中心から至近距離を通過するため、劇的な活動が予想されるそうだ。その数は、地球では1時間あたり1万個にも達する可能性があるということだ。

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