ガンマ線バーストのシュープラノバ・モデル
【2000年11月16日 国立天文台・ニュース(394)】
ガンマ線バーストの機構としてこれまでにいくつかの説が提案されていますが、最近のガンマ線バーストでX線スペクトルから鉄が検出されたことにより、考え方に変革がせまられています。
ガンマ線バーストとは、突然強いガンマ線の放射が天空の一角に起こり、短時間で終息する現象です。 ほぼ1日に1回くらいの割合で観測される非常に遠いところの大爆発で、太陽が100億年かけて生み出す量のエネルギーをたったの1秒で放出するという、ほんとうに想像を絶した現象です。 この爆発の機構として普通に考えられているのはハイパーノバ(hypernova,極超新星)説で、超大質量の星が崩壊してブラックホールになるときの爆発がガンマ線バーストになるというものです。 支持者は少ないものの、二つの中性子星が衝突してガンマ線バーストを起こすという説もあります。
ところが1999年7月5日6および12月16日のガンマ線バーストで、爆発余光のX線スペクトルから、多量の鉄が検出されたという報告がありました。 一般に鉄は恒星の内部で核反応によって作り出され、超新星爆発で宇宙空間にばらまかれると思われています。 今回検出された鉄は、バーストの際、爆発中心から数100万キロメートルも離れたところに存在したと考えられ、これはハイパーノバ説では説明できません。 そこで、爆発が二段階で起こるというシュープラノバ(Supranova)モデルが浮上しました。
この説では、高速で回転する大質量星が通常の超新星爆発を起こして鉄などを放出し、後に高速で回転する中性子星が残ると考えます。 その後数ヶ月から数年後に、磁場などの影響で回転速度の落ちた結果、中性子星が崩壊してブラックホールになる。 このときの崩壊が大量のエネルギーを放出するガンマ線バーストだというのです。 しかし、この説はまだ思いつき程度のもので、厳密な理論的検証を経たものではなく、賛否まちまちです。
いずれにせよ、鉄が検出されたことで、ガンマ線バースト機構について見直しが迫られているのは確かなようです。
参照
- Amati, L et al., Science 290,p.953-955(2000).
- Piro, L. et al., Science 290,p.955-958(2000).
- Schilling, G., Science 290,p.926-927(2000).