カッシーニ探査機がとらえた木星の雲の動き
【2000年11月27日 NASA JPL (2000.11.20)】
NASAのジェット推進研究所は、木星の雲の動きをとらえた短い動画を2本公開した。これらは、現在木星に接近中の土星探査機「カッシーニ」が撮影した画像から作成されたものである。カッシーニは木星の重力を利用したスイングバイ航法により土星へ向かう加速を得るため、現在木星に接近中である。12月30日に木星に最接近する予定で、その前後には1995年末から木星系を探査中のNASAの木星探査機「ガリレオ」との共同探査が実現する。なお、カッシーニは、NASA、ヨーロッパ宇宙機関 (ESA)、イタリア宇宙機関 (ISA) の共同プロジェクトである。
大赤斑付近の雲の動き
これは、木星の「大赤斑」と呼ばれる巨大な渦付近の雲の流れを青フィルターでとらえたものであり、2000年10月1日から10月5日にかけ、木星が7周自転する間に撮影された画像から、数枚の画像を選択して製作された動画である。木星の自転周期は約10時間である。大赤斑の大きさは多少の変動があるが、最大時には長さ5万km、幅1万kmにも達する。これは、地球4個分に近い大きさである。
画像は、単純円筒投影図法により平面展開されている。とらえられている範囲は、北緯50度〜南緯50度、東西100度である。この動画に見られる最も小さな構造は、およそ500キロメートルの大きさのものである。
なお、この動画の各コマ間の撮影間隔は木星の1自転分または2自転分であり、一定ではない。
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Image credit: NASA/JPL/University of Ar izona
帯状のジェット気流の動き
これは、大赤斑とは反対の木星面の帯状のジェット気流の動きを青フィルターでとらえたものである。この帯状のジェットは、過去100年間変わらない速度で流れていることが知られている。撮影期間、とらえられている範囲の広さ・緯度、平面展開処理などは前出の大赤斑のものと同様であるが、画像処理により中間フレームを補完生成することにより、各フレーム間の時間間隔が一定の滑らかなアニメーションを実現している。
画像で同緯度部分を左から右 (つまり西向きに) に流れる雲は、木星の磁気圏の自転よりやや遅く動いており、それとは反対方向に流れる雲は木星の磁気圏の自転よりやや速く動いている。木星は固体の地表を持たないため、自転の動きの基準は磁気圏の動きである。
黒い斑点が突然現われているが、これは木星の4大衛星のひとつ「エウロパ」の影である。
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Image credit: NASA/JPL/University of Arizona