火星隕石の生物痕跡を支持する新たな証拠

【2000年12月19日 Spaceflight Now News (2000.12.14)

1996年に火星起源の隕石「ALH84001」に火星の生物のものと思われる痕跡が見つかったというセンセーショナルな発表がなされたのは記憶に新しいが、この痕跡が火星生物のものであるということを強く支持する新たな論文が発表された。

今回、Kathie Thomas-Keprta氏 (ロッキード・マーティン社/ジョンソン宇宙センター) を中心とする研究チームが『Geochimica et Cosmochimica Acta』誌の12月号に発表した論文によると、重要なのは磁鉄鉱 (Fe3O4) の特殊な結晶の存在であるという。

この磁鉄鉱の結晶は、1996年の発表で微生物の痕跡とされた炭酸塩の粒の中に見られるもので、長さ10ナノメートル〜200ナノメートルの直線状の構造をしている。論文によると、これは、地球に生息する「MV-1」と呼ばれる種族のバクテリアが体内で生成するものと酷似しているという。

また、磁鉄鉱そのものは地球でも無生物的なプロセスで自然に生成し得るものだが、ALH84001に見られるような構造の磁鉄鉱の結晶は、無生物学的なプロセスで自然に生成されることはあり得ず、また現在のところ人工的に生成することにも成功していないということだ。

論文の共著者のひとりであるSimon Clemett氏は、こう語っている。

「火星は地球より小さく、惑星としての進化は急速でした。よって、磁鉄鉱の結晶を作り出すバクテリアは、火星においてひじょうに早期に生息していたのかもしれません。」