[チャンドラ] キャッツアイ星雲に強いX線を放つ中心星を発見

【2001年1月12日 CXC PR: 01-01 (2001.1.8)

X線によるキャッツアイ星雲

NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」の観測により、りゅう座方向約3000光年にある惑星状星雲NGC6543 (通称「キャッツアイ星雲」) の中心星が、X線で明るく輝いていることが発見された。強いX線を放つ惑星状星雲の中心星が発見されたのは、これがはじめてのことだ。この中心星は、数百万度もの高温のガス雲に取り巻かれている。

惑星状星雲は、中質量の恒星がその寿命の終わりに膨れ上がり、やがて外層部を放出した結果、形成される。その中心部には、高温の恒星の核が露出する。そして核はやがて、わずかに残された核融合反応の燃料である水素を使い果たすと、つぶれて高密度の白色矮星となる。白色矮星は、しばらくは余熱で輝いているが、やがては冷え、輝きを失なってゆく。

キャッツアイ星雲は、形成されてから1000年ほどと考えられている。観測チームでは、キャッツアイ星雲の中心星は、恒星としての生涯の最後の段階にあり、あと200万年〜300万年のうちには完全な白色矮星となるのではないかと推測している。

この中心星からは最後の物質が恒星風として吹き出されつつあり、その速度は毎時約640万キロメートルである。チャンドラの画像に見られる中心星をとりまく高温ガス雲は、この恒星風である。ところが、チャンドラが測定したこの高温ガス雲の温度は、毎時約640万キロメートルで吹き出される恒星風の場合に予測される温度よりも低温であった。このことは新たな謎を呼んでいる。

中心星が強いX線を放っていることも、また謎である。以前の観測によると、中心星そのものの表面温度は、およそ6万度ほどであることがわかっている。しかし、チャンドラがX線で測定したその温度は、200万〜300万度である。観測チームでは、これは中心星そのものからの放射ではなく、高速の恒星風が生む衝撃波からの放射ではないかと考えている。

1999年5月10日〜11日、チャンドラの高度CCD撮像分光器ACISによる撮影。視野角は横30秒角 (1秒角=3600分の1度)。露光時間は12.8時間。

X線+可視光によるキャッツアイ星雲

Image credit: X-ray: NASA/UIUC/Y.Chu et al., Optical: NASA/HST

観測チームでは、星雲内での高温部分 (X線で輝いている部分) がどこであるかを確かめるため、チャンドラによる画像とハッブル宇宙望遠鏡による画像を合成した。右がその画像で、青〜紫の部分が高温部分に対応する。

この画像では、星雲の内側のフィラメント状の泡構造の内部に、高温部分が分布していることがわかり、中心星から吹き出される高速の恒星風が、可視光で見られる星雲構造を形成する冷たいガスを押し広げていることがうかがえる。