[チャンドラ] いて座の中性子星、西暦386年の超新星の名残りか
【2001年1月12日 CXC PR: 01-02 (2001.01.10)】
NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」を用いた観測から、いて座の超新星残骸「G11.2-0.3」にある中性子星が、中国に記録が残っている西暦386年の超新星の名残りであるという強い証拠が得られた。もし確定されれば、歴史上に記録が残されている超新星と中性子星とが関連付けられた例としては、西暦1054年に出現した超新星の残骸として有名なおうし座の「M1 カニ星雲」の中性子星に続き、2例目となる。
中性子星は、大質量星が超新星爆発を起こして寿命を終えた際に生成されるコンパクトな超高密度天体である。規則正しい電波パルスが観測されるため、パルサーとも呼ばれる。
超新星爆発の爆圧は球対称ではないため、その中心で生成される中性子星は、爆圧の低かった方向に高速で移動を開始する。したがって、その移動速度と移動距離がわかれば、中性子星の年齢を推定することが可能だ。
チャンドラの高い解像力を用いて撮影されたこの画像では、超新星残骸の星雲のほぼど真ん中に中性子星が見られることから、とても若い中性子星であることが伺え、このことはこの中性子星が西暦386年に観測された超新星の名残りであることを示唆する強い証拠である。歴史上の超新星の記録と現在見られる中性子星との関係を調べることは、天体の年齢を正確に特定するための数少ない手段であり、ひじょうに重要である。
また、中性子星から吹き出す奇妙なジェット状の構造は、初めて発見されたものであり、これは同じく若い超新星残骸である「ほ座超新星残骸」や「カニ星雲」において中性子星の近くに見られる美しい弧状の構造と対比をなす。
2000年8月6日および2000年10月15日、チャンドラの高度CCD撮像分光器ACISによる撮影。露光時間は計8.3時間。視野角は横5.8分角、縦5.4分角 (1分角=60分の1度)。
Image credit: NASA/McGill/V.Kaspi et al.