遠方の巨大銀河団見つかる 最大の宇宙構造か

【2001年1月15日 Spaceflight Now (2001.01.09)

国際研究チームが、遠方に巨大な銀河団が存在する証拠をつかみ、アメリカ天文学会の冬季会合で発表した。この銀河団は「しし座」の中心部のやや南の方向65億光年以上の距離にあり、およそ6億光年の範囲にわたって広がっていると思われる。これは、観測可能な宇宙の中では最大の宇宙構造である可能性がある。なお、65億光年という距離にあるということは、宇宙の年齢が現在の3分の1程度であったころの構造であることを意味する。

この銀河団は、「大クエーサー群 (large quasar group) 」として知られる領域内に発見された。クエーサーとは、ひじょうに遠方にありながら明るい核を持つ、極めて活動的な銀河のことであり、その中心部には巨大なブラックホールが潜むと考えられている。

「大クエーサー群」は、およそ6億光年の範囲に18個ものクエーサーが集中している領域である。通常、この程度の領域には、2〜3個のクエーサーしか含まれない。クエーサーは銀河団の中心部で銀河どうしが衝突・融合したり、銀河団の外縁部の複数の銀河どうしが近づきつつある領域で極度にガスが圧縮された結果、形成される場合が多いと考えられているため、大クエーサー群が巨大銀河団の一員である可能性が疑われた。

そこで、研究チームでは、この大クエーサー群よりもさらに遠方にあるクエーサーを分光観測し、そのスペクトルに見られる銀河間物質による吸収線を調べた。その結果、大クエーサー群には莫大な量のガスが含まれることがわかった。そして、マグネシウム (銀河を球形にとりまく銀河ハローに含まれる) による吸収線が見られたことから、巨大銀河団の存在が判明した。

ただし、銀河はクエーサーに比べるとどれもずっと淡いため、巨大銀河団の直接の検出にはまだ至っていない。研究チームでは、その存在を確定するためにはさらなる研究が必要であるとしている。直接の検出のためには、大望遠鏡を用いてもかなりの長時間露光を行なう必要があると思われる。

なお、今回の発見は、宇宙の進化に関する通説に疑問をなげかけるものだ。今回発見された巨大銀河団が、そこに例外的に多い物質が存在する結果形成されたものであるとすると、通説では宇宙年齢が現在の3分の1ほどという早い時期に、それほどの大規模構造が形成されることの説明がつかないのである。通説が今後も維持できるかどうかは、この巨大銀河団に含まれる物質の総量の測定にかかっている。