若い星のダスト円盤中に多量の水素
【2001年1月18日 国立天文台・天文ニュース (409)】
比較的太陽の近くにある3個の若い星で、そのダスト円盤内に相当量の水素分子の存在が検出されました。これは、木星型のガス惑星形成理論にさまざまな影響を与えると思われます。
左は、ISOが波長1.25μmの赤外線でとらえた「がか座ベータ星」。右は、水素分子の輝線付近の赤外スペクトル (Credit: ESA / G. Blake, Caltech)
観測された星は、「がか座ベータ星」、「くじら座49番星」、「おおかみ座」の「HD135344」の3個です。これらはいずれも2000万年より若い星で、周囲にダスト円盤の存在が知られていました。しかし、これまでは、ダスト円盤中にガスはほとんどないと考えられていました。ただしこれは、水素よりもずっと観測しやすい一酸化炭素の観測に基づくもので、、いわば間接的な推定でした。
オランダ、ライデン天文台のティ(Thi,W.F.)たちのグループは、ヨーロッパ宇宙機間 (ESA)の赤外宇宙天文台 (Infrared Space Observatory; ISO) の短波長分光器 (Short Wavelength Spectrometer; SWS) を使って水素分子の回転遷移を直接に観測し、3星のどの円盤も相当量の水素分子を含んでいることを確認しました。その量は一酸化炭素から推定されていた量の数100倍に上り、特に「HD135344」は、ほぼ木星一個分の水素ガスを保持していました。これは、一酸化炭素による推定が誤りであったことを示すもので、ダストに対するガスの量の比はほぼ100でした。これは、一般的な星間物質におけるガス-ダスト比とほぼ同じ値です。
これまでの理論では、巨大ガス惑星は、恒星を取り巻く原始惑星系円盤に十分なガスが存在するうちにガスをかき集めて成長する必要があり、数100万年という比較的短時間で形成されるという考え方が主流でした。しかし、今回の発見から、ガス惑星の形成に、たとえば1000万年から2000万年程度の時間をかけることもありうると考えられます。
こうした事実から考えると、巨大ガス惑星が生まれるために何か特別の条件が必要というわけではなく、太陽と似たような質量で孤立している星の周辺には、かなり一般的にガス惑星が存在すると考えてもいいようです。1995年以降、たくさんの系外惑星が発見されています。発見されたものは、ほとんどが木星かそれ以上の質量をもつ巨大惑星です。これはもちろん、大質量の惑星でなければ発見できない現在の検出方法の影響によるものですが、巨大ガス惑星がかなり一般的な存在であることを示すものということもできます。
しかし、これら系外惑星の軌道は太陽系の惑星と大きく異なっていて、まだ解決されていない多くの問題点を含んでいます。
<参照>
- Thi,W.F. et al., Nature 409, p.60-63(2001).
- Lissauer,J.J., Nature 409, p.23-24(2001).