新しい原子力エンジンが火星への短期飛行を実現する!?
【2001年1月24日 Spaceflight Now (2001.1.19)】
新しいタイプの原子炉を用いたエンジンにより、火星への片道飛行がわずか2週間にまで短縮できるかもしれない。
ベングリオン大学 (イスラエル) の原子工学教授Yigal Ronen氏により考案されたこの原子炉は、燃料として「アメリシウム-242m (Am-242m)」を用いるもの。この Am-242m は、Am-241 という同位体に中性子線を照射することにより、人工的に生成される。
Ronen教授は Am-242m が、厚さ1ミクロン以下の薄いシート状に伸ばした状態でも、核分裂反応を続けることができることを発見した。このようなシート状であれば、核分裂により生成された物質が容易に放出される。そしてこの放出された物質により、水素ガスなどの推進剤をおよそ25万度という超高温に熱し、熱されたガスは秒速80キロメートルという超高速で吹き出され、大きな推力を生むというわけだ。
推進方式はまだ研究初期の段階に過ぎず、まだ具体的な設計は全く成されていないが、Ronen教授の推定によると、この推進方式を用いて一般的な大きさの無人探査機を飛行させた場合に必要な Am-242m は、1日あたりわずか375グラム。火星への片道飛行は2週間程度で可能で、必要な Am-242m は数キログラムだ。もっとも、Am-242mの生成はまだ高価だが、しかし非現実的な値段でもない。
もちろん、この方式が火星旅行を短縮する唯一の方法であるわけではなく、NASAの可変特殊インパルス電磁プラズマ・ロケット(Variable Specific Impulse Magnetoplasma Rocket; VASIMR) など、別の研究も存在する。しかしRonen教授は、Am-242m こそ未来の宇宙探査のカギであると考えている。
<関連ニュース>
- 2000.06.15 - NASA、プラズマ・ロケットの開発で民間会社と提携 (VASIMRに関する記事)