衝突する2つの銀河を結ぶ黒いパイプライン
【2001年1月24日 STScI-PRC01-02 (2001.01.09)】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡 (HST) が可視光で撮像したこの画像は、1億年ほど前に衝突をはじめた2つの銀河のようすをとらえたものだ。これらの銀河は、「おうし座」の方向およそ3億光年の距離に位置する。2つの銀河の中心間の距離はわずか2万3000光年ほど。これは、太陽系から銀河系中心までの距離よりも少し短いぐらいの距離でしかない。
この画像には2つの銀河を結ぶ黒い「パイプライン」が見られる。このガスとチリから成る「パイプライン」は、左側のNGC1410銀河において始まり、およそ2万光年にわたって延びて、右側のNGC1409銀河をリボンのように取り巻いている。幅はわずか500光年ほど。NGC1410銀河からNGC1409銀河に向け、1年あたり太陽質量の0.02倍ほどの物質を流し込んでいるらしい。天文学者たちはこれまでに銀河どうしが衝突する場面を数多く観測してきたが、一方の銀河からもう一方の銀河へ物質が流れ込むようすが、これほどはっきりとらえられたのは初めてのことである。
この「パイプライン」は、重力的な効果により形成されているものと考えられるが、具体的にどのように形成されているかは不明だ。この「パイプライン」がNGC1410内のどこで始まっているかもわからない。また、このように物質が流れ込んだ場合、そこで星生成活動が引き起こされるはずだが、NGC1409にはそのような兆候は見られない。もしかしたら「パイプライン」を形成する物質は比較的温かいため、重力的に圧縮されて星生成活動を引き起こすことができないのかもしれない。
パイプラインの影響による活動こそ見られないものの、銀河どうしの衝突そのものの影響は明らかである。豊富なガスを持つ渦巻き銀河であるNGC1410銀河 (中心部に巨大ブラックホールを持つ活動銀河「セイファート銀河」に分類される) を見ると、腕には青く若い星が密集し、衝突の影響で激しい星生成が行なわれていることがよくわかる。NGC1409銀河の中心付近から銀河を二分するように延びる暗い分子雲の帯も、衝突する銀河に見られる典型的な現象だ。
これら2つの銀河は、時速100万キロメートル程度の速度でお互いの周りを巡りながら接近しつつある。今後2億年のうちには、接近しては離れ、また接近するということを数回繰り返した後、完全に融合して1つの銀河になると考えられている。
1999年10月25日の撮影。
Credits: NASA, William C. Keel (University of Alabama, Tuscaloosa)