[HST] 近傍銀河 NGC6822 の星生成領域「Hubble-X」
【2001年1月24日 STScI-PRC01-01 (2001.01.04)】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡 (HST) により撮像されたこの画像は、NGC6822銀河――「いて座」の方向約163万光年にあり、私たちの銀河系から最も近い銀河のひとつ――の中にある巨大な分子雲「Hubble-X」をとらえたものだ。
この分子雲は私たちの銀河系にある「オリオン大星雲」とよく似た領域で、劇的な星生成が行なわれている領域である。ただし、スケールは「オリオン大星雲」よりはるかに大きい。「オリオン大星雲」が直径およそ20〜30光年なのに対し、「Hubble-X」の直径はおよそ110光年。中央部に見られる星団には何千もの生まれたばかりの恒星が含まれる。
大量のガスとチリから成る巨大分子雲――背後の星からの光を遮り、また冷たく自らも輝きを放たないため、暗黒星雲とも呼ばれる――が自らの重力で次第に圧縮されたり、または超新星爆発の衝撃波などで密度にムラができると、所々の濃くなったところにさらに物質が集まり始める。星の形成の始まりだ。
いったん始まった星の形成は、加速度的に進行して行き、やがて1個かそれ以上のひじょうに大質量の星――この画像にはっきりと見られる星々――が誕生すると、それらの星から放射される紫外線が星雲のガスを高エネルギー状態にした結果、星雲全体が輝きを放つようになる。この段階が、「Hubble-X」や「オリオン大星雲」に見られる状態だ。「Hubble-X」の場合、激しい星生成活動はわずか400万年ほど前に始まったと考えられている。
そして、大質量星から放出される恒星風が星雲のガスをすっかり撒き散らしてしまうと、星生成活動は、突然の幕切れとなる。
1997年9月7日、広視野/惑星カメラ2による撮像。露光時間は2.6時間。
Image Credit: NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)
Acknowledgment: C. R. O'Dell (Vanderbilt University)