地球磁気圏観測衛星IMAGEによる地球磁気圏の広域画像

【2001年1月30日 Science@NASA (2001.01.25)

NASAの地球磁気圏観測衛星IMAGE (Imager for Magnetopause to Aurora Global Exploration; 磁気圏界面-オーロラ広域探査・撮像衛星) による、地球磁気圏の広域画像が公開された。2000年3月25日にデルタ-2ロケットにより打ち上げられたIMAGEは、地球磁気圏を広い範囲でとらえることのできる初めての科学衛星だ。

太陽風から地球を守る地球磁気圏
太陽風から地球を守る地球磁気圏

磁気圏は、太陽風とよばれる、太陽から恒常的に吹き出される高速のプラズマ流 (プラズマ=荷電粒子の集合) などから地球を守る防御壁である。太陽風は地球磁気圏に達すると大半は押し曲げられ、地球を反れる。反れなかった一部のプラズマは磁気圏にとらえられ、地球の周囲に渦巻くことになる。このように、磁気圏は太陽風が地球に直接ぶつかるのを防いでいる。太陽風は生命にとって有害であるため、地球に磁気圏が存在しなければ、今日の生命の繁栄は無かったかもしれない。

太陽表面で大規模な爆発現象 (フレア) が発生すると、それに伴なって普段の太陽風よりはるかに強力なプラズマ流が一気に噴出される (コロナ質量放出; CME)。これが地球磁気圏にぶつかると、地球磁気圏が乱れ、磁気嵐が発生する。このときには磁気圏を渦巻くプラズマが磁力線に沿って南北の極地方の上層大気に流れこみ、美しいオーロラを生じさせる他、人工衛星に障害が生じたり、ラジオやテレビ、携帯電話の電波障害が引き起こされることがあり、特に規模が大きい場合は大規模な停電の原因となる場合さえある。

したがって近年、磁気嵐の発生とその規模を予測する「宇宙天気予報」と呼ばれる分野が生まれている。しかし、磁気圏に関する理解はまだまだ不充分であり、したがって宇宙天気予報もまだまだこれからの分野である。2年間にわたり地球磁気圏の広域的な構造と変化を観測するIMAGEのミッションは、重要な進歩をもたらすことだろう。

以下の2枚の画像は、ともに世界時2000年8月11日18時00分ごろの撮像。地球の北極上空から地球を見下ろす形で撮像されており、太陽は右上方向にある。

IMAGEの超紫外線撮像器EUVがとらえた地球磁気圏の姿

IMAGEの超紫外線撮像器EUVがとらえた地球磁気圏の姿。これは、磁気圏にとらえられたプラズマのうち、比較的低温のものからの紫外線放射を撮像したもの。画像中心の淡い円は、地球のオーロラが放つ紫外線。左上には、フックのように見える尾状の構造が見て取れる。太陽の方向に向かって延びるこの構造は、30年以上も前から存在が予測されていたが、実際にとらえられたのははじめて。

IMAGEの高エネルギー中性原子撮像器HENAがとらえた地球磁気圏の姿

IMAGEの高エネルギー中性原子撮像器HENAがとらえた地球磁気圏の姿。こちらは、高温プラズマの中の中性原子からの放射をとらえたもの。色は密度に対応する。この画像から、地球を取り巻く高温プラズマは、地球の昼側で最も高密度であることが判明したが、これは予想に反するものであった。

Image Credit (Illustration): NASA / Marshall Space Flight Center
Image Credit (IMAGE): NASA / IMAGE science team