チリの巨大電波望遠鏡「ALMA」日本・北米・欧州での共同建設へ

【2001年4月10日 国立天文台天文ニュース (430) (2001.04.09)】

日本 (国立天文台)と北米 (米国国立科学財団)およびヨーロッパ (ヨーロッパ南天天文台)の代表は6日、東京にて調整委員会を開催し、巨大電波望遠鏡を3者対等の国際協力でホスト国のチリの協力を得て建設・運用することを目指すことについての決議書に署名しました。

ALMAの完成イメージ (合成写真)
チリ・チャナントールにおけるALMAの完成イメージ (合成写真)

「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA)」と呼ばれるこの電波望遠鏡は、チリ北部のアタカマ砂漠にある標高5000mのアンデス高地の14km四方の範囲に展開される、可搬型の直径12mのアンテナ64基を中心とする大型の電波望遠鏡です。これら全てのアンテナを1つの対象天体に向け、それぞれのアンテナからの信号を超高速でデジタル信号処理することで、ハッブル宇宙望遠鏡をさらに10倍も上回る性能に相当する高い解像力を実現することができます。天体からの信号を集める全てのアンテナを合わせた集光面積は、既存のサブミリ波望遠鏡の40倍以上になります。

これまで、日本では「大型ミリ波サブミリ波干渉計 (LMSA)」計画、アメリカでは「ミリ波干渉計 (MMA)」計画、そしてヨーロッパでは「大型南天干渉計 (LSA)」計画という3つの大型計画が独自に進められてきました。米欧の計画は1999年にALMA計画として統合され、合同での設計開発が始まりました。今回、日本の国立天文台が北米・ヨーロッパと対等な3番目のパートナーとして参加したことで、この計画は基礎科学研究の分野でも数少ない真のグローバルな計画となりました。日本の参加により、特にサブミリ波での撮像性能や分光性能に大きな向上が期待されています。

ALMAが完成すると天体物理学のほぼ全ての分野に大きなインパクトをもたらすと期待されています。最も重要なテーマのひとつとして、宇宙初期に生まれた最も遠方にある (すなわち最も若い) 銀河の観測が考えられます。これらの若い銀河は生まれるや否や最初に生まれた星々から放出された塵に覆われたため、光では塵による強い減光を受けるために観測することが難しかったのですが、これらの若い銀河もミリ波・サブミリ波帯では明るく輝いていると考えられています。銀河系の中に関しても、星・惑星系を育んだ塵に覆い隠された領域の形状や運動や化学組成などを探ることができるようになります。ALMAでは、これまで光では見ることができなかった「暗黒の」天体を電波(ミリ波・サブミリ波)で観測し、光での観測と併せて現在の宇宙に見られる天体の多様性や生命の起源に迫っていくでしょう。

今回の署名された決議書では、ALMA計画への参加のための計画全体の承認と予算確保に全力を挙げることが誓約されており、2010年からの全面運用開始(建設開始から数年後に一部運用開始)を予定しています。

<参照>