国立天文台、カイパーベルト天体を発見
【2001年5月17日 国立天文台・天文ニュース (440)】
日本のグループがついにカイパーベルト天体を発見しました。発見されたのは2個で、ともに「しし座」の一等星レグルスの少し東に位置し、赤外等級で24級前後の暗いものです。
海王星より遠距離にあり、円に近い軌道で太陽の周りを公転している一群の天体を、エッジワース・カイパーベルト天体といいます。この種の天体の存在を予言した二人の天文学者エッジワース(Edgeworth,K.)とカイパー(Kuiper,G.P.)を記念してこのように呼ばれるのですが、海王星以遠天体(Trans-Neptunian Objects;TNOs)と呼ばれることもあります。この種の天体は1992年以降引き続いていくつも発見され、その総数はすでに500個を越えています。国立天文台でも、東京大学木曽観測所の口径1.05メートル、シュミット・カメラなどを使って捜索をしていましたが、新しく発見をすることはできませんでした。
2001年2月22日から25日にかけて、木下大輔(きのしただいすけ)、渡部潤一(わたなべじゅんいち)ら国立天文台のグループは、ハワイ、マウナケア山の口径8.2メートル、すばる望遠鏡で観測をおこない、上記のように、新しく2個のカイパーベルト天体を発見したのです。この二つの天体には、2001 DR106および2001 DS106の認識符号がつけられました。観測期間が短いので、まだ精密軌道の決定はできませんが、円軌道を仮定して、
2001 DR106 軌道半径 44.46天文単位 軌道傾斜角 1.5度
2001 DS106 軌道半径 42.57天文単位 軌道傾斜角 6.3度
が計算されています。冥王星の平均軌道半径がほぼ40天文単位であることを考えると、これらの天体がいかに遠いかがわかると思います。太陽を一周するのに、それぞれ296年、および278年もかかるのです。今後、さらに観測が加わり、より精密な軌道が決定されることが期待されます。
とにかく、たいへん距離が遠いので、2001 DR106も、2001 DS106も、ここしばらくは大きく位置を変えることはありません。いまでも発見位置の近くにあります。5月21日の予測位置は、
2001 DR106 赤経 10h16.12m 赤緯 +10°48.0' 明るさ 25.0等
2001 DS106 赤経 10h16.87m 赤緯 +10°23.4' 明るさ 24.8等
です。明るさが25等程度しかないのですから、かなり大望遠鏡でないかぎり観測は不可能でしょう。
5月21日の2001 DR106および2001 DS106の予測位置。それぞれ黄色と緑の×の中心に位置。
<参照>
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