火星高地に水による大規模な侵食痕

【2001年5月18日 Washington University News Release (2001.05.16)

ワシントン大学のBrian M. Hynek氏 (地球惑星科学部博士過程終了予定)、Roger J. Phillips氏 (地球惑星科学部教授、同大学のマクドネル宇宙科学センター責任者) らの研究により、火星のwestern Arabia Terraとよばれるヨーロッパ大陸ほどの高地全体が、水により大規模な侵食を受けたらしいということが明らかになった。

火星の陸地は、クレーターと峡谷に覆われた地質学的に古い高地 (おもに南半球) と、なだらかでクレーターも峡谷も少ない地質学的に新しい低地 (おもに北半球) に大別されるが、現在火星を周回中のNASAのマーズ・グローバル・サーベイヤー探査機のレーザー高度計により得られた詳細な標高マップにより、western Arabia Terraは他の高地よりも1キロメートルほど標高が低いということが判明した。

さらに研究を進めると、この地方は、他の高地とは大きく異なって、大きなクレーターも峡谷もとても少なく、無数の侵食痕があることがわかった。これらのことから考えられることは、この地域は、激しい侵食を受けた結果標高が低くなったということである。

Hynek氏らは、この地域は、火星の初期において液体の水により侵食されたと考えている。

火星の初期においては、激しい火山活動により、溶岩や火山灰とともに、莫大な水と、そして二酸化炭素や硫黄その他の温室効果ガスがもたらされ、200万年〜300万年程度存続する厚い大気が形成されたと考えられている。そして、厚い大気の存在により気温は氷点よりも高くなり、液体の水が存在できる環境があったはずなのである。

「この地域はきっと、2004年に火星に着陸する2機の探査ローバーの着陸地点のひとつになるはずだよ。」Hynek氏は語る。「かつて水があった場所に行きたいわけだからね。」