NASA、彗星探査のディープ・インパクト計画にGOサイン!

【2001年5月28日】

NASAは、ディープ・インパクト (Deep Impact) 計画と呼ばれる彗星探査計画について、探査機の制作を承認した。メリーランド大学のMichael A'Hearn博士の主導によるこの計画は、彗星核に弾丸を打ち込んでその一部を吹き飛ばし、彗星核の内部の化学組成を探ろうというもの。2004年1月の打ち上げ、2005年7月にテンペル第1彗星に到着の予定。

彗星は、太陽系の原材料の残余物とされている。しかし、長年にわたって太陽の放射にさらされてしまっているため、その表面は劣化してしまっている。そこで、劣化した表面を吹き飛ばし、太陽系形成当時の化学組成などを保っている内部のようすを探ろうというのが、この計画の趣旨だ。ひじょうに野心的な計画であり、重要な成果が期待される。

目標となる彗星は、核の直径が6キロメートルほどの、テンペル第1彗星(9P/Tempel-1)で、公転周期は約5.5年。計画では、探査機が彗星にある程度接近した時点で質量771ポンド (約350キログラム、主に銅から成る) の「弾丸」を探査機本体から分離、2005年7月4日に毎時22,300マイル (毎時約35,900キロメートル) の相対速度で彗星核に突入させる。この衝突により、直径100メートル、深さ25メートル程度の大きさのクレーターが生成されると推算されている。

探査機本体は安全な距離を保って衝突のようすを観測、衝突により吹き飛ばされた物質の化学組成や、クレーターの大きさなどを測定する。

「弾丸」や探査機に搭載されているカメラからの映像は、地球に届き次第インターネットなどで世界に準ライブ中継される予定。

さらに、地上望遠鏡による観測も併せて行なわれる。各種大型望遠鏡による観測はもちろん試みられるが、衝突によって一気に彗星の明るさが増すと考えられるため、アマチュアの望遠鏡でも充分観測可能とされる。

なお、この計画は、研究者からの計画の一般公募により、低コスト・高効果の探査ミッションを実現しようというNASAの「ディスカバリー計画」の一環。ディスカバリー計画には、1997年に火星に着陸した「マーズ・パスファインダー」や、2000年2月から小惑星をはじめて周回探査し、2001年2月に初着陸にも成功した「NEAR-シューメーカー」などがある。

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