ボレリー彗星は太陽系で一番黒っぽい天体だった
【2001年12月6日 SPACE.COM】
全長 5km のジャガイモ形をしたボレリー彗星は、今まで観測された中では太陽系で一番黒っぽい天体であることが、NASA JPL(ジェット推進研究所)の探査機ディープ・スペース 1 号の観測結果の解析からわかった。その表面はまるでコピー機のトナーのようなもので覆われているかのように真っ黒なのだ。
発表によると、ボレリー彗星は光を 3% 以下しか反射しないということだ。今までに知られていた太陽系で最も反射率の低い天体はハレー彗星で、反射率は 4% である。ボレリー彗星のこの反射率は月の半分程度に相当する。これほど低い反射率であるためには彗星の表面がどのような成分で構成されている必要があるのだろうか。炭素や鉄が適当であると考えられるが、彗星核の表面の下に何があるのか知るすべはまったくないらしい。
彗星は太陽系ができた時の原始の情報を持っている。しかし、そういった彗星を近くで見ることができる機会はほとんどなく、その内部構造はまだ研究が進んでいない。内部どころか表面でさえも謎に包まれたままだ。というのは、地球から研究できるほど近くに彗星が来た時には太陽からも近いので、彗星の表面は蒸発してコマと呼ばれる塵と水蒸気の雲の中に隠されてしまうからである。今回のように探査機で彗星核に接近しての観測を増やせば、彗星の正体に少しずつ迫ることができるかもしれない。
ディープ・スペース 1 号は、NASA の新千年紀プログラムの一つで、1998 年 10 月に打ち上げられた。1999 年 9 月にイオン推進技術など 12 の主任務を終えた後も継続して観測を続けている。
なお、NASA の動画のページではボレリー彗星に関する動画を見ることができる。