ワータネン彗星の核は直径1.2キロメートル
【2002年2月28日 国立天文台・天文ニュース (529)】
来年打ち上げられる彗星探査機ロゼッタ(Rosetta)は、8年後の2011年に目標のワータネン彗星(46P/Wirtanen)に到着する予定です。チリ、パラナル山にあるヨーロッパ南天天文台のVLT(Very Large Telescope)による観測により、この彗星核の直径が1.2キロメートルであること、着陸機の着陸を妨げるダストのほとんどないことが明らかになりました。
ワータネン彗星は1947年7月にリック天文台のワータネン(Wirtanen,C.A.)が発見した、5.5年の周期をもつ周期彗星です。探査の目標になったことで重要視され、観測が企図されました。今回の観測は探査機が到着する予定期日と太陽からの距離がほぼ同じになる2001年12月9日に、口径8.2メートルのVLTのひとつイエプーンを使っておこなわれました。太陽からの距離は約3天文単位です。彗星の明るさは約23等という暗いものでしたが、4回の露出を解析した結果、核の直径が約1.2キロメートルであること、この距離では彗星核は活動を見せず、周囲にガスやダストがほとんどないことがわかりました。これは探査機を着陸させるためには明るい情報です。
ロゼッタはヨーロッパ宇宙機構(ESA)が計画を推進している彗星探査機で、2003年1月12日に打ち上げ予定、火星で1回、地球で2回のフライバイをおこなって、目標のワータネン彗星に向かいます。途中2006年7月に小惑星(4979)Otawaraに、また2008年7月に小惑星(140)Siwaに接近して観測をすることになっています。その後2011年11月にワータネン彗星に到着、彗星核に着陸機を降ろして観測、表面に穴を掘って物質を採集、分析する予定です。ロゼッタ自体は彗星を周回して、2013年の彗星の近日点通過まで観測を続ける計画です。この計画が順調に進めば、彗星についてこれまでにない詳しい情報がもたらされることでしょう。
なお、小惑星(4979)Otawaraは、1949年に発見され、日本の写真家大田原明(おおたわらあきら)さんを讃えて命名された小惑星です。大田原さんは「野外星図2000」、「恒星惑星カタログ2000」の出版に協力した熱心なアマチュア天文家です。