国立天文台の施設が国登録有形文化財に
【2002年4月17日 国立天文台・天文ニュース(543)】
国立天文台三鷹キャンパスの大赤道儀室(国立天文台歴史館)と第一赤道儀室が、文化財保護法の規定により、2002年2月14日付けで、国登録有形文化財に指定されました。三鷹キャンパスでは、すでに1998年7月、太陽分光写真儀室(塔望遠鏡、俗称=アインシュタイン塔)が同文化財に指定されており、これで3つの有形文化財を擁することになります。
国立天文台の前身は、1888(明治21)年に港区麻布飯倉に設置された東京天文台です。麻布周辺の市街化が進んだため、1914年(大正3年)から10年ほどかけて現在の地(三鷹市大沢)に移転しました。このため、大正デモクラシーの自由な雰囲気が表現された、全国的にも希少な大正期洋風建築物が、三鷹キャンパスには点在しています。
1921(大正10)年建設の第一赤道儀室は、三鷹キャンパスに現存するもっとも古い観測施設で、ドームの周りにベランダが付けられており、左右対称の美しい外観が特徴です。太陽観測用の口径20センチメートル屈折望遠鏡(ツァイス製)が設置されていて、1999年までの60年間、太陽黒点のスケッチ観測が行われてきました。
1926(大正15)年竣工の大赤道儀室は、屈折望遠鏡としては国内最大口径65センチメート望遠鏡(ツァイス製)を有する、高さ19.5メートル、ドーム径15メートルの巨大な建築物です。外壁には小さなアーチを繰り返す「ロンバルト帯」がほどこされていて、ロマネスク様式の建築物の影響を受けていることが分かります。現在は、国立天文台歴史館としてリニューアルし、国立天文台の歴史を伝える展示施設となっています。
なお、太陽分光写真儀室(1930(昭和5)年完成)は、社団法人東京建築士会が、創立50周年記念事業として選定した、「20世紀:東京の建築遺産50選」に、東京駅、国会議事堂、安田講堂などと並んで選出されました。東京都多摩地域で戦前に建てられた建築物では唯一の選出で、この建物の文化財としての価値が建築の専門家からも強く支持されたことになります。
この3つの建造物は常時公開されており(太陽分光写真儀室は外観のみ)、年末年始を除く毎日見学することができます。