6月11日の金環日食(NAOニュース)
【2002年6月6日 国立天文台・天文ニュース(553)】
6月11日、太平洋北部の一部の地域で金環日食が起こり、日本では早朝の部分日食となります。
この日食の金環食帯は、日本のはるか南方、インドネシアの北の海上から始まり、太平洋北部を北東へ走り、日付変更線を越えるとやや南下して、メキシコ西海岸で終わります。今回は金環食帯が通過する陸地がほとんどありませんが、幸いサイパン島のすぐ南にあるテニアン島にかかっています。日本から近いこともあって、ここで金環日食を観察をするツアーが企画され、そろそろ日本を出発する時期になっています。テニアン島での金環日食は食分が99.1パーセントとなりますので、非常に細いリングが残る印象的なものとなるでしょう。テニアン島で金環食がはじまるのは11日午前7時11分(日本時間・現地時間=午前8時11分)頃ですが、インターネット中継も試みられるので、関心のある方はご覧になってみてください。
日本では早朝に全国で太陽の一部が欠ける部分日食となります。東からのぼりはじめた太陽が次第に欠けていき、7時半から8時頃に最も深く欠けます。食分は各地でまちまちで、北海道で30パーセント、東京で45パーセント程度となります。
日食といっても、まだ太陽の大部分が隠されずに残っていますので、観察するときには肉眼で見てはいけません。たとえ何割か欠けていても、直視すると網膜が焼けてしまいます。観察には部分日食観察用の特殊グラスを使用するか、ピンホールを造って太陽の像を投影するようにしましょう。使用済みの小さな穴の空いたテレフォンカードやオレンジカードを太陽にかざし、その後ろに紙をかざすと、穴の数だけ欠けた太陽像が並ぶので、とてもユニークです。しし座流星群などで、毎回千人を超える参加者を集める「高校生天体観測ネットワーク(Astro-HS)」では、今年度の最初の高校生向けの教育的な天体現象として、この部分日食を選び、詳しい観察マニュアルを掲載しています。高校生ばかりでなく、本格的に観測してみたい方は、それらを参考にして安全に行ってください。
今回の金環日食に続く、次の日食は今年12月4日(日本時間)に起こる皆既日食で、皆既食帯はアフリカ西海岸に始まり、アンゴラ、ザンビア、ジンバブエ・ボツワナ国境、南アフリカ北部、モザンビークを通り、インド洋を大きく渡って、オーストラリア南部に達します。この日食は日本では見ることはできません。次に日本で見える日食は2004年10月14日の部分日食となります。