チャンドラと電波望遠鏡の観測で見つかった超新星残骸の中心のパルサー
【2002年6月26日 Chandra Photo Album】
NASAのチャンドラX線観測衛星とアレシボの電波望遠鏡を使った観測によって、超新星残骸の中心にある明るいリングの真ん中に中性子星パルサーが見つかった。中性子星の膨大なエネルギーがどのように光速に近い速さで運動する粒子へ与えられるのか、中性子星の周りで起こっている現象の謎を解く1つの手がかりになりそうである。
超新星残骸 SNR G54.1+03は「や座」の方向にあり、地球からおよそ1万6000光年離れている。大きさは6光年ほどである。チャンドラの撮影した画像には、超新星残骸の中心に輝く明るい点とその周りのリングやジェット状構造が写し出されているが、このリングやジェットは高エネルギーの粒子で構成されている。
アレシボ電波望遠鏡による観測で、中心にあるのは中性子星パルサーであることがわかった。このパルサーは毎秒7回転している。また、このパルサー(と超新星残骸)は3000年ほど前に爆発を起こしたものであることもわかった。1997年に日本のX線衛星ASCAが観測したデータの解析から、パルサーがX線でもパルスを発していることもわかっている。
高エネルギー粒子でできているリングは次のようにして形成されたと考えられる。中性子星の周りの強烈な電場によって粒子が加速され、ジェットやディスクが形成される。その結果として衝撃波が発生し、粒子が非常に高エネルギーになって、X線で光るリングとして見えているのである。
SNR G54.1+03の物理的な特徴は、かに星雲のパルサーや「ほ座」の超新星残骸に見られるパルサーなどとよく似ている。これらの天体の似ている点、そして違う点を解析することで、中性子星の回転エネルギーがほとんど損失なく超高エネルギー粒子へと移る過程をより詳しく理解できるようになると期待されている。