HSTが撮影した、細長く延びた惑星状星雲
【2002年7月19日 ESA Hubble Information Centre】
NASAとESA(ヨーロッパ宇宙機関)が共同運営しているハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、細長く延びた惑星状星雲の写真が公開された。これほどまでに細長く延びた形の惑星状星雲は珍しいということだ。
この惑星状星雲にはHenize3-401という番号がついており、約10000光年離れたりゅうこつ座の方向にある。惑星状星雲とは、星の外層部のガスが星から離れて広がっていき形成された天体である。恒星の内部では、水素やヘリウムといった軽い元素から炭素・窒素・酸素などの重い元素が核融合反応によって作られているが、これらの元素が宇宙空間にばら撒かれ、新たな星に取り込まれたり惑星の元になったりするのである。つまり、この拡散システムは宇宙が進化していく上でとても重要な役割を果たしているということだ。そして、惑星状星雲はその拡散の現場を見ていることになる。
写真からもわかるように、この惑星状星雲は細長く延びた形をしており、入り組んだ紐のような構造やほつれた端を持つ2つの円筒型のガスの流れが特徴的である。また、惑星状星雲を作り出している中心の星も見えている(中心のオレンジ色の点)。このように正反対の2つの方向に延びた構造は「双極構造(bipolar)」と呼ばれ、多くの惑星状星雲に見られるが、Henize3-401の場合には特に細長く延びている。なぜこのような双極構造になるのかについてはまだはっきりとした結論は得られていない。伴星の存在が必要だという説もあれば、中心星の強力な磁場の影響だという説もある。
この美しい眺めも、ほんの数千年という、宇宙のスケールで考えると非常に短期間で消えてなくなってしまう。そして、中心の星は冷え、白色矮星となるのである。