重い星は重元素の多い領域でもできるのか?
【2002年8月29日 ESO Press Release】
銀河の進化に大きな影響を及ぼす、質量の大きな星。このような星は重元素の多い領域でも形成されるのだろうか? この問題に対する答となるような観測が、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(The Very Large Telescope)を用いて行なわれた。
太陽の数十倍から数百倍の質量を持つ重い恒星は、強烈な紫外線の放射や強い恒星風、超新星爆発で、恒星の周りの領域に大きな影響を与える。つまり、このような大質量星のでき上がり方や分布を調べることで、銀河全体の進化のようすを推測することができるのだ。
このような質量の大きな星は、重元素が多く星形成が盛んな領域でも形成されるのだろうか? ある理論によれば、重元素が多く星形成が盛んな領域では生まれたての星からの放射が強いために、周囲にある恒星の素になる物質が分散してしまい、ある限界以上の質量の恒星はできないと考えられている。
質量の大きな星の分布を調べるため、ESOの研究者たちは、およそ5000万光年かなたにあるおとめ座銀河団の銀河 NGC4254(M99)をVLTで観測し、銀河のH II領域(電離水素領域)を90個ほど観測することに成功した。そして、そのうち少なくとも30の領域で「ウォルフ・ライエ星」というタイプの大質量星が複数あることがわかった。観測結果を詳しく解析した結果、これらの大質量星は間違いなく重元素の多い領域で形成されることなどもわかった。
銀河の中心部分や銀河同士が相互作用を起こしている領域など、重元素の多い領域でも大質量星が形成されることが直接観測されたのはこれがはじめてである。先にも述べたように、大質量星は銀河全体の進化に大きな影響を与える。恒星と銀河、両面における研究が進むことを期待したい。