山形の板垣さん、M110に新星と思われる天体を発見
【2002年10月7日 VSOLJニュース 097・山岡 均(九大・理)氏】
銀河系外の新天体としては超新星が有名ですが、私たちの近くにある銀河では、超新星よりは数等級暗いけれども爆発天体である新星現象が捉えられることがあります。アンドロメダ大銀河M31の新星は、このところ毎年数例発見されていますが、そのお伴の銀河であるM110(NGC 205)に新星らしき天体が出現しているのを、山形県の天文愛好家、板垣公一さんが10月5.56日(世界時、以下同)前後に撮影した画像から発見されました。日本人が銀河系外の新星を発見したのは、筆者の知る限り初めてのことです。板垣さんは以前から彗星や超新星をいくつも発見されているベテランの天体捜索家です。
発見時、新星は1時間のうちに16.4等から16.1等へと急速に明るくなっていくところが捉えられています。天体の存在は、山梨県の串田麗樹さんによって5.764日に確認されましたが、その時には天体は15.8等とさらに明るくなっていました。串田さんが3.65日に撮影した画像では19等より明るい天体はなく、この天体は増光が始まって間もないものと思われます。確認画像から串田嘉男さんが測定した新天体の位置は、
赤経 0時40分15.26秒 赤緯 +41度44分19.8秒 (2000年分点)
で、M110銀河の中心から西に77秒角、北に193秒角ほどにあたります。ご存知のように、アンドロメダ大銀河M31には、M32とM110という2つの明るいお伴の銀河がありますが、M110はM31の北西側で、南にあるM32よりもややM31から離れた位置にある楕円銀河です。
これらの銀河に出現する新星は、極大等級が15〜20等程度になりますので、今回の天体が実際に新星ですと、最も明るい部類に入ります。新星は明るいものほど増減光が速いという傾向にあり、この天体で見られた急速増光は、明るい新星の特徴に合致します。とすると、この天体が私たちの目を楽しませてくれるのは短い期間になる公算が強いでしょう。今後のスペクトル観測による天体の性質の解明や、明るさの変化のようすの追跡が待たれます。