X線で見た銀河の姿から明らかになるダークマターの存在

【2002年10月25日 Chandra Photo Album

NASAのX線観測衛星チャンドラが撮影した銀河NGC720の画像が公開された。可視光の写真とは違った写り方をしているこの画像から、やはり宇宙にはダークマターが存在しているのだという証拠が得られたようだ。

(X線と可視光で見た銀河NGC720の写真)

X線(左)と可視光(右)で見た銀河NGC720(提供:X線:NASA/CXC/UCI/D.Buote et al., 可視光:DSS U.K.Schmidt Image/STScI

NGC720はくじら座にある銀河で、地球からの距離は約8,000万光年。可視光で撮影するといたって普通の楕円銀河に見える。しかし、X線で観測すると、可視光で見える形とは違った方向にのびた高温ガスに銀河が包まれているようすが明らかになったのだ。

大きく広がったガスが拡散してしまわないようにするには、銀河に大量の質量が必要となる。しかし、観測される星やガスだけではその質量に足りない。つまり、星やガス以外の部分に多くの質量が存在しているということだ。このように、光やX線では直接検出できないが重力の影響を通じてのみ存在がとらえられる物質をダークマターと呼ぶが、計算によれば、この銀河では星やガスの質量の5倍から10倍の質量がダークマターとして存在しているようである。また、可視光の見え方とX線での見え方が違うことから、ダークマターは星の分布とは違った分布をしていると考えられている。

また、今回の結果から、「冷たいダークマター」と呼ばれるダークマターの理論が正しそうだという証拠が得られたようだ。重力に関する理論や冷たいダークマター以外のダークマターモデルでは、今回の観測結果をうまく説明できないということである。

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