半世紀を経て見つかった、スチュアートの現象でできた月のクレーター
【2003年2月25日 JPL News Release】
およそ50年前にアマチュア天文家が撮影した月に写っていた模様が、月に小天体が衝突してできたものらしいということがわかった。
1953年11月15日の早朝、アメリカ・オクラホマ州のアマチュア天文家レオン・スチュアート(Leon Stuart)氏が1枚の月の写真を撮影した。彼が撮影した写真には、小惑星サイズの天体が月に衝突したばかりの現場を捉えたと思われる白い点が写っていた。
スチュアート氏は天体の衝突によってこの白い点ができたと考えたが、疑い深い人の中には、たまたま隕石が地球に落ちてきたのが月と重なって見えただけだろうと考える人もいた。それから半世紀もの間、この白い点の正体について議論がされてきたが、衛星から撮影した写真を詳しく調べた結果、どうやら本当に月に小天体が衝突してできたらしいということがわかったのだ。
研究者たちは小天体の衝突によって発生するエネルギーの大きさを見積もり、それによってどのような大きさのクレーターが月面にできるかを計算した。スチュアート氏が撮影した写真を調べると、小天体の大きさは20m程度だと推測できる。その天体が衝突してできるクレーターの大きさは1kmから2kmほどになる。
研究者たちは、このサイズにあう新しいクレーター探しを始めた。1967年に衛星ルナ・オービターが撮影した月面写真からは候補となる新しいクレーターは発見できなかったが、1994年に衛星クレメンタインが撮影した写真には、その候補となる新しいクレーターが写っていた。新しいクレーターは他のものよりも青っぽく、そして明るく見えるはずだが、候補となるクレーターは、大きさ・色合い・明るさのすべての点で条件を満たしていたのだ。もちろん、クレーターの位置も、スチュアート氏が50年前に撮影した写真の白い点の位置と一致している。
このような現象が起こるのは50年に1度程度と見積もられている。そして、その珍しい現象を目撃したことがあるのは、今のところスチュアート氏ただ一人だけだ。