ガンマ線バーストの衛星・地上連携観測

【2003年3月27日 美星天文台など】

先日開催された日本天文学会2003年春季年会で、ガンマ線バースト観測衛星と地上の望遠鏡の連携によりガンマ線バーストの直後から暗くなってしまうまでの一連の詳細な観測が行なわれたことが発表された。

(ガンマ線バーストGRB021004の写真)

2002年10月4日のガンマ線バーストを捉えた写真。美星天文台の101cm望遠鏡で撮影された(提供:美星天文台)

ガンマ線バーストとは短時間に強いガンマ線が空の一点から降ってくる現象で、1967年に初めて観測された。突発的に起こる現象で予想がつかず、しかも短時間のうちに暗くなってしまうため、その起源は謎に包まれている。最近の衛星によるガンマ線バーストの観測やそのあとにX線や可視光で見られる残光を観測から、ガンマ線バーストは数十億年かなたで起こっている高エネルギー現象であることがわかったが、その起源は依然として謎のままである。太陽の数十倍の質量を持つ星が崩壊してブラックホールが生まれる際に発生した衝撃波がガンマ線バーストになるという説が有力視されているほか、中性子星同士が合体してブラックホールを形成するときに発生するという説もある。

今回観測されたのは、昨年10月4日に発生したガンマ線バーストGRB021004である。ガンマ線バーストを検出し世界中に位置を速報する衛星HETE-2の報告を受けて、発生から数日間で十数カ国の望遠鏡でガンマ線バーストの残光の観測が行なわれた。特に日本では、京大の屋上にある望遠鏡、東大木曽観測所、美星天文台で、発生当夜の光度変化のようすが詳しく観測された。発生直後から数時間にわたる観測はこれまでに例がなく、ガンマ線バースト発生直後の貴重なデータが得られたことになる。

  • HETE-2による迅速な位置通報
  • それを受けた世界中での残光観測
  • 特に日本では発生直後の貴重なデータが得られたこと
  • 京大屋上では都市光の中30cmという小型望遠鏡で観測に成功

という大きな成果が得られたことで、HETE-2衛星と地上望遠鏡の連携観測がガンマ線バーストの研究に大いに力を発揮することが証明された。今回の観測から得られた光度変化によれば、ガンマ線バーストの正体は大質量星の重力崩壊に伴うものであるという説が一層有力になったようだ。今後も衛星と地上望遠鏡の連携で多くの現象を観測することで、その起源にさらに迫ることができるだろう。

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