気象庁のカメラが捉えていた6月16日の火球
【2003年6月20日 国立天文台・天文ニュース(643)】
6月16日22:07頃、関東地方の広い範囲で火球(非常に明るい流星)が出現し、多くの目撃があり、各地で測候所や天文台に問い合わせが殺到したことは、すでに新聞報道でご存じの方も多いと思います。この火球に伴って、各地でドーンという衝撃波が観測されており、隕石の落下の可能性も指摘されています。このような隕石の落下は日本全国では一年に一件程度の割合で起こっていると考えられていますが、今回の場合、梅雨空の悪天候も重なって、目撃者に乏しく、正確な出現時刻などが判明していませんでした。
日本流星研究会などのアマチュア天文家による電波観測から、22時07分30秒頃ではないか、とされていますが、目撃者の報告によれば時刻的には22時10分頃に集中しており、衝撃波の時刻の報告と混乱しているようです。衝撃波は火球の出現から、やや遅れて地上に達します。これが各地の地震計に記録されているようで、防災科学研究所の広域に渡る高感度地震観測網 [Hi-net] では、記録された時刻から火球の飛行経路の概略が判明しつつあります。
ところで、気象庁では各種の計測の他、火山活動を24時間監視するカメラを各地に設置しています。そのうちのひとつ、静岡県伊東市に設置された伊東東部火山群の火山監視カメラの画像に、今回の火球が写し混まれていることが判明しました。国立天文台に寄せられた今回の火球に関する情報の中では、唯一の画像で、貴重なものと言えるでしょう。このカメラを運用している気象庁地震火山部火山課では、「伊東のカメラ映像は、24時間で動画を上書きしてしまうので、連続画像としては残されていないが、コマドリとして3枚の画像に火球の発光が捉えられている」と話しています。
3枚の画像は約1.5秒刻みで記録され、それぞれ6月16日22時07分43秒、44秒、46秒のものでした。雲の上で青白く光る火球の光が東の方へ動いていくのがよくわかります。この時刻記録は画像が気象庁のシステムで映像を取り込んだ時刻を示しており、その伝送に時間がかかっているため、実際の現象の時刻とは1、2秒程度ずれているとのことですが、いずれにしても今回の火球の出現時刻が、この精度で正確に記録されていることから、今後の研究に貴重な情報といえるでしょう。